2021/6/21

そして昨年、銀河系内のマグネターが、高速電波バーストに似た電波バーストを発生させた。この電波バーストは、宇宙のはるかかなたからくる非常に強力な電波バーストに比べると少々弱かったが、科学者たちは高速電波バーストの発生源はマグネターであると確信した。

米コロンビア大学とフラットアイアン研究所に所属するブライアン・メツガー氏は、当時の状況を「理論家も観測者もマグネターという答えに満足していました」と振り返る。

しかし、その状況は長くは続かなかった。FRB 20200120Eの発見により、球状星団の中でマグネターが誕生して生き残るか、非常に古くて不活発な星々の集団が強力な電波バーストを起こすしくみのいずれかを示す必要に迫られたからだ。どちらも簡単な問題ではない。

より多くの情報を

天文学者たちは、球状星団にマグネターがあるはずはないが、ほかの種類の星の死骸はたくさんあるはずだと考えている。太陽のような星が膨張して赤色矮星(わいせい)となって死んだあとにできる白色矮星や、より大きな超新星爆発によって形成される中性子星は、古い球状星団の初期に作られている可能性がある。

もしかすると、中性子星どうしや白色矮星どうしが衝突して合体したり、白色矮星が伴星から大きな質量を奪って崩壊し、新たな中性子星になったりしたときに、マグネターが誕生するのかもしれない。しかし、現時点では、こうしたしくみでできたマグネターが観測されたことはない。

ノースウェスタン大学のイエ氏は、球状星団の中でマグネターが形成される道筋や、ほかの恒星が高速電波バーストの発生源となる可能性を検討する必要があると考えている。また、高速電波バーストのほかの発生源について考えるためには、今回の球状星団の情報をもっと集めることが重要だという。

「一口に球状星団と言ってもさまざまです」とイエ氏は言う。「密度の高いものもあれば低いものもあり、球状星団が異なれば結果も異なるものになるでしょう」

メツガー氏は、マグネターがなくても高速電波バーストのようなものを発生させることはできるはずだと指摘する。2つの中性子星がお互いのまわりを回っていれば、高速電波バーストに似た爆発を起こす可能性がある。ブラックホールのまわりでときどきジェット(噴出)やフレア(爆発)を生じる円盤状の物質が電波バーストの発生源になる可能性もある。「私は、ここにある天体はマグネターではないのではないかと考えています」

チャタジー氏も同意見で、「一部の高速電波バーストはマグネターとは無関係で、ブラックホールのジェット現象のようなものと関係しているのかもしれません」と言う。

もしかすると高速電波バーストには、いくつかの異なる発生源があるのかもしれない。短時間に膨大なエネルギーが放射されるガンマ線バーストという現象は、1960年代に軍事衛星によって発見されて以来、数十年にわたって天文学者を悩ませてきた。だが今では、強力な超新星爆発でも、中性子星どうしの衝突でも、発生することがわかっている。

「自然界はガンマ線バーストを発生させる方法を2つ、編み出しました」とメツガー氏は言う。「高速電波バーストについても、似たようなことが起こっているのではないでしょうか」

(文 NADIA DRAKE、訳 三枝小夜子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2021年5月31日付]

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