同性の恋人の言葉に衝撃受ける

自傷行為をやめた大きなきっかけは、美樹との出会い。美樹は、私にとって初めての同性の恋人です。美樹と付き合い始めてしばらくたったある日、けんかをした後に自分の足をカッターで深く切りつけたことがありました。後日、私の足の傷痕に気づいた美樹は、「痛いよね、痛いよね」と言って手当をしながら、目に涙を流してこう言ったんです。

「加奈ちゃんは自分に刃を向けているように見せて、人に刃を向けているんだよ」

この言葉に大きな衝撃を受け、それ以来、衝動に駆られた時は美樹の顔が思い浮かぶようになり、少しずつ自傷行為をしなくなっていきました。

「この体は自分だけのものじゃない。私は美樹に丸ごと愛されている」という気づきが、自傷行為をやめるきっかけとなった

今振り返ると、美樹と出会う前の私は、「こうあるべき」というさまざまな偏見で自分を縛っていました。古いジェンダーロールにとらわれて明るい未来を描けずにいましたし、周りの大人たちから「理想」を押し付けられていると感じる一方で、私も理想の家族像や大人像を周りに押し付けていたんです。過去の経験から、「いい自分もそうではない自分も丸ごと肯定する」「自分の価値観やステレオタイプを人に押し付けない」ことを大切にしています。

悩みを一人で抱えがちな人へ

本当に悩んでいる時、人は孤独感から、「誰にも分かってもらえない」と感情を抑圧して自分の殻に閉じこもってしまうことがあります。でも、少しだけ余裕がある時には、顔を上げて周りを見てほしい。つらい時、ふと顔を上げたら何も聞かずに友達や同僚がそばにいてくれた。何となく苦しそうにしているのを親が察して、いつもと違う食事が出てきている。そういう形で寄り添われている場合もあります。

悩んでいる人や明らかにメンタルがつらそうだという人が周りにいたら、「何か自分にできることはないかな」と思う人は結構いるものです。私は割とそういうタイプで、自分が友人として相談に乗る立場だったら、大抵の迷惑は全然構わないし、悩んで一人で閉じこもって取り返しのつかないことになる前に、私に何かできることはないかと考えます。でも、「誰かの力になりたい」という人ほど、自分自身が悩んだ時に「相談できる人がいない」「迷惑をかけてはいけない」と心を閉ざしてしまうことが少なからずあります。

コロナ禍でオンライン診療やオンラインカウンセリングも身近になってきました。心の不調を感じた時は、専門機関を利用してもらいたいです。

みたらし加奈
臨床心理士。1993年生まれ。SNSを通して、精神疾患についての認知を広める活動を行っている。大学院卒業後は、総合病院の精神科にて勤務。ハワイへの留学を経て、現在は臨床心理士として一般社団法人 国際心理支援協会に所属しながら、個人での発信も続けている。性暴力や性的同意に関する専門的な知識を発信するメディア「mimosas(ミモザ)」理事。著書に『マインドトーク―あなたと私の心の話』(ハガツサブックス)。女性のパートナーと共にYouTubeチャンネル「わがしChannel」も配信中。

(取材・文 加藤京子=日経xwoman doors、写真 鈴木愛子)

[日経xwoman 2021年5月12日付の掲載記事を基に再構成]

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