ステップ3 心のフタを開ける力をつける

ステップ1では行動を見つめ、思いもよらない行動を発見しました。ステップ2では感情、意識を生み出す心を分析しました。さらに、心の奥深くにアクセスするトレーニングをします。これは、無意識のうちに自ら固く閉ざしている「心のフタ」を開ける練習です。

ここからは私がやっている「インサイト発見ワークショップ」でのやりとりを例に挙げながら進めていきます。

「あなたにとって、スターバックス コーヒーに行くインサイトは何ですか?」

こう尋ねられたとき、あなたはどのように答えるでしょうか。

「自由に仕事ができる快適な場所です」
 「疲れたときにスターバックスに行くと、ホッとくつろげます」
 「おしゃれな雰囲気が気に入ってます。あえて言うなら、サードプレイスでしょうか」

これら一つ一つは「実際にそう思った」ということかもしれませんが、残念ながら表面上のきれい事にとどまっています。

私は、この状態を「心のパンツ」をはいていると表現しています。誰の心の中にも、目を背けたくなるようなドロドロした何かがあります。それはコンプレックスかもしれません。誰にも見せたくない弱い部分、自分でもウンザリするような邪悪な思いかもしれません。普段は前向きに明るく生きていくために、しっかり封印していることでしょう。インサイトを理解するには、このダークな部分をのぞき込む必要があります。

臆することなく、自分の中にある暗闇に足を踏み入れてみましょう。どんな心が浮かび上がってきたでしょうか。

「できるビジネスマンに見られたい」
 「スマートに仕事をこなす自分を演じているけれど、自分の能力がそこまで達していないことを知っている」
 「本当は勉強したり、何か努力したり、人に頭を下げたり、そういうことをしないといけないということが分かっているにもかかわらず、逃げている」

これらの思いを受け止めてくれる、ほんの少し楽にしてくれる場所がスターバックス コーヒーだったという気付きが生まれたとき、自分や周囲の心を動かす何かがうっすらと浮かび上がってきます。

ここまで自分自身の心のツボを見つけるスキルを磨く方法を紹介してきました。心のツボを探り当てるには、1人の客としての自分の行動や感情、意識に目を向け、克明に再現すること、これらを生み出す自分の心理を深く理解することが欠かせません。一流のマーケターになる前に必要なのは「一流の消費者」になることなのです。

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本書では、こうした鹿毛氏が長年、マーケティング活動で実践し、研究を重ねてきた顧客の「心」を理解するためのノウハウを余すことなく記しています。マーケターだけでなく、営業、販売など人に関わるビジネスパーソンにとって、仕事を成功に導くヒントが満載の内容となっています。

(日経クロストレンド 中村勇介)

鹿毛康司
 かげこうじ事務所代表/マーケター/クリエイティブディレクター。「お客様の心に向き合う」をテーマにマーケターとして活動中。雪印乳業(現雪印メグミルク)を経て、2003年にエステー入社。同社を日本有数のコミュニケーション力のある企業に導く。20年に独立、かげこうじ事務所を設立。代表作は消臭力CM。11年震災直後の「ミゲルと西川貴教の消臭力CM」で一大社会現象を起こす。早稲田大学商学部卒、ドレクセル大学MBA。現在、グロービス経営大学院教授、エステー・コミュニケーションアドバイザー。

「心」が分かるとモノが売れる

著者 : 鹿毛康司
出版 : 日経BP
価格 : 1,870 円(税込み)

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