ちょこちょこためて、まとめて使う 小口貯蓄の楽しみ
言わずもがなですが、貯蓄があったほうがいいのは誰しもわかっていることでしょう。貯蓄の目的は、年代によって違います。結婚資金、マイホーム資金、子育て資金、老後資金……、様々な使い道が考えられます。また、いざという時のための貯蓄もあったほうが安心でしょう。
注意しなくてはならないのは、ためることに没頭しすぎてしまい、手段であるはずの貯蓄が目的になってしまうことです。「とにかくためる!」とがんばってしまうと、気持ちの面で追い詰められてしまい、目的額になるまでの暮らしが殺伐としたものになってしまいます。
お金は使うときに価値があるもの。適度にお金を使って、楽しんだり、遊んだりすることも必要ではないでしょうか。そのためにおすすめなのが、小口貯蓄です。家計に影響が出ない範囲の金額を長期的にためていくというものです。
筆者の実例を挙げますと、少し古い話になりますが、2002年に日韓で開催されたサッカーワールドカップ(W杯)。「日本でワールドカップをやるかもしれない」という話が出始めたのが、その7~8年前でした。ニュースを聞いた日から、「絶対にワールドカップを見たい」と思い、毎月1500円ずつ貯蓄し、晴れてワールドカップの試合を生で観戦することができました。約8年でためたそのお金が存在しなかったら、いざワールドカップのチケットを購入するというときにポンと出せたか自信はありません。小口貯蓄の威力を実感しました。
「余ったら貯蓄に回す」ではいつまでもたまりません。自分でルールを作り、ためていくのがコツです。
どのようなルールがいいのか。いくつか小口貯蓄の例をご紹介します。
小銭貯蓄
「500円玉貯金」というのはやっている方が多いかもしれません。お釣りで500円玉をもらったら使わずに貯蓄するというルールで、専用の貯金箱もありますね。
しかしキャッシュレス化が進んだ今、現金で支払うという機会が少なくなってきた人も多いかと思います。そんなキャッシュレスの今だからこそ、持ち歩く財布を小さいものにして、現金で支払ったときのお釣りの小銭は全て貯蓄するというのはいかがでしょう。現金を使った日は、帰宅後に小銭を全て貯金箱に入れるというルールにすれば、小さな財布をスッキリさせることもできます。
差額貯蓄
「差額貯蓄」と、少し強引な名前をつけてみました。今まで支払っていた固定費の中で、何か値下がりしたものがあればそれを貯蓄に回す、あるいは収入でプラスになった金額を貯蓄に回すというものです。
これも筆者の実例ですが、以前に家賃が毎月3000円値下がりしたことがありました。数万円の家賃のうちの3000円というのは金額として大きくありませんが、これを自動で貯蓄に回しておくと、数年後にはかなりの金額になっていました。
今でしたら、携帯電話の料金などはいかがでしょうか。大手通信会社も格安スマホも今年に入り、続々と安い料金プランを発表しています。契約を変更して料金が下がった分を毎月貯蓄に回すという方法です。今まで支払えていたのですから、家計に大きな影響はないはずです。
お給料がアップした場合も同じです。今の時代、数万円単位で月のお給料が上がる業種はそう多くはなく、数千円という場合もあるでしょう。その額を「数千円じゃ何もできない」と思わずに、毎月貯蓄に回していけば数年経つと大きくなり、何かができる金額になっています。
旅行積み立て
今は新型コロナウイルス禍で難しいですが、長期的にためる目的は旅行という人が多いかもしれません。その場合、航空会社や旅行会社がやっている旅行積み立ても選択肢です。
毎月数千円から始められ、支払い回数も12回や36回、60回など自分で選ぶことができます。満期時にはその会社の旅行券として戻ってきます。特筆すべきは利率の良さで、航空会社の全日本空輸(ANA)や日本航空(JAL)で使える旅行積み立ては最大約3%のサービス額がつきます。預貯金の金利が0.001%などという現在では、かなりお得に感じます。また預貯金の場合は利息に税金がかかりますが、旅行積み立てには税金がかからないというのも利点です。
JALやANAの場合、WEB申し込み限定にはなりますが、クレジットカードで支払うこともできます。クレジットカードポイントが付いて、マイルに交換することもできます。
しかし注意も必要です。積み立てていた会社が倒産した場合は、お金が戻ってこない可能性があるということです。預金保険機構によって一定の範囲で預貯金が保護されるのとは違うところです。
ためやすい小口貯蓄の方法
ここまで小口貯蓄のルールの例を挙げてきましたが、やはりためやすいのは天引きでの貯蓄です。収入から自動で貯蓄に回るようにしておけば、手間もかかりませんし、はじめからないものという感覚になるので残った金額でやりくりしていくことになります。繰り返しになりますが、「余ったら貯蓄に回す」ではなかなかたまりません。先に貯蓄に回してしまいましょう。
また、貯蓄用口座はメイン口座と別にするのがおすすめです。同じ銀行内で普通預金と定期預金で口座を分けるのもいいですし、「他行への振込手数料○回までなら無料」というサービスの対象になっている口座を持っていれば、他行へ口座を持つのもよいでしょう。
家計に影響が出ない金額での小口貯蓄。続けていくと数年後には大きく遊ぶことができるのでおすすめですよ。ぜひご検討ください。
家事アドバイザー・節約アドバイザー。明治大学卒。女性専門のキャリアコンサルタントを経て現職に。家事の効率化、家庭の省エネなどを専門にテレビ、雑誌、講演などで活動。著書:「シンプルライフの節約リスト」(講談社)他 オフィシャルサイト https://yanokikuno.jp
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。