人気カテゴリーの「ネオ・クラシック」

いま世界のモーターサイクルシーンでは「ネオ・クラシック」と呼ばれるカテゴリーが人気となっている。「現代の車体やエンジンを過去の名車を思わせるデザインで包んだバイク」というのが、そのおおまかな定義だ。

一見、GB350もその仲間のように見えるが、実際は微妙にキャラクターが異なる。古典的な形式のエンジンを最新技術を用いて新設計するなど、あくまで現代のモーターサイクルとして、クラシックモデルが持つ魅力を再現しようとしている。

ボア×ストローク=70.0ミリメートル×90.5ミリメートルという超ロングストローク設計の空冷単気筒OHCエンジン。最高出力は15kW/5500rpm、最大トルクは29N・m/3000rpmを発揮。始動はセルフスターターで行う

その白眉が「ロングストローク」で設計された空冷単気筒エンジンだ。ロングストロークというのはエンジン内部のシリンダー内径(ボア)と、ピストンが往復するときの行程距離(ストローク)の関係性のこと。エンジンの基本特性に大きな影響を与える要素なので、車両カタログの諸元表にもしっかり表記されている。

内径が行程距離よりも大きい値ならショートストローク型、内径よりも行程距離のほうが大きい値ならロングストローク型と呼ばれる。専門的になってしまうのでこれ以上の詳しい説明は割愛させてもらうが、現代のほとんどのモーターサイクルは前者を採用する。モーターサイクル用のエンジンとして、ショートストローク型のほうが総合的に高性能化しやすいからだ。先ごろ生産終了が話題となったヤマハ SR400も、ショートストローク型の空冷単気筒エンジンである。

ではなぜホンダのような大メーカーが、非効率なエンジンをわざわざコストを投じて新設計したのか。ホンダ曰く「インド市場で支持されている『ロイヤルエンフィールド』に敬意を表しつつ、味わい深い二輪車の普遍的な魅力を最新の技術で再構築したかった」とのこと。

ロイヤルエンフィールドは1901年に英国で創業した老舗のモーターサイクルメーカー。70年に本社は倒産するが、インドに設立していた現地工場がブランドを引き継いで生産を継続。国内の巨大な二輪市場を背景に、50~60年代の基本メカニズムを変えることなく生産を続け、インドの国民車として広く親しまれてきた。つまり一種の“ガラパゴス”だ。そのロイヤルエンフィールドの象徴ともいえるエンジンが、ほかならぬロングストロークの空冷単気筒なのである。

タンデムライダー(後席の乗員)が体を保持するためのグラブバーや荷かけ用フックなどの実用装備が充実。日々の移動手段としても活用できる

実際にGB350に試乗してみると、クラシックバイクのおいしい部分だけを抽出したような乗り味だった。

特に印象的だったのが、マフラーから発せられる快音だ。スロットル操作にシンクロして、排気量の大きい単気筒エンジン(ビッグシングルともいう)特有のはじけるような排気音がどの回転域でも心地よく響く。メーカーのリリースを読むと、排気音は本車のキャラクターを体現する特徴のひとつであるとして、開発初期段階からサウンドの質を検討してきたという。実際、不快なノイズだけがカットされ、音色がとてもクリアだ。まるで楽器である。

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ドコドコと心臓の鼓動のような振動
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