仕事への不満や徒労感で感染症リスクがアップ!?

ビジネスパーソンのストレス要因の最たるものは、仕事に関わるストレスだろう。「リモートワーク環境への対応など、コロナ禍による環境変化の長期化により、仕事に関わるストレスはさらに高まっているのでは」と案じるのは、労働環境におけるストレスと免疫に関する研究を行う国際医療福祉大学大学院教授の中田光紀さんだ。

中田さんは、職場のストレスのなかでもどのような状態が免疫に負の影響をもたらすのかに注目。「7つの研究を系統的に解析したところ、職場の心理ストレスの中でも、仕事に費やす努力への見返り(経済的、心理的、キャリア面など)が低い、と感じる人ではSIgAとNK細胞活性が低下する一方、感染症の感染時に高くなる炎症マーカー(CRPやIL-6)の増加が認められた[4]。適度なストレスはモチベーションとなり、免疫が増強されることもあるが、こうした徒労感が長期化すると免疫機能は低下する」(中田さん)

「職務満足感」という指標を用いて免疫との関係を調べた中田さんの研究では、職務満足感が低いほどNK細胞の活性が低くなった(グラフ)。別の研究では、職務満足感が高い人は過去1年の風邪罹患(りかん)回数が平均2回だったが、低い人は4.3回と2倍以上の開きがあった[5]。

「反対に、仕事へのやりがいが保たれると感染への防御力が維持される可能性がある。実際に、失業することによってNK細胞活性が下がっても、就職が決まった翌月に前月よりも44~72%の増加が認められたという研究も[6]。ストレスから解放されるとNK細胞活性は1カ月程度で回復すると考えられる」(中田さん)。

健康なホワイトカラー306人(男性165人、女性141人。平均年齢36歳)を対象に、仕事の満足度に関する4項目の質問に答えてもらい、血液検査によって免疫の状態を調べた。男女ともに仕事への満足感が下がるほどNK細胞活性が低くなった。 (データ:Brain Behav Immun. 2010 Nov;24(8):1268-75.)

仕事のストレスをためるのは良くないとわかっていても、取り除くのが難しいのも現実。中田さんは、職場の人間関係のなかで解決の鍵となるのはどんな立場の人かを見るために、働く人に対する「社会的支援」と血中の炎症マーカー(IL-6、TNF-αなど)の関係を調べた。その結果、「男性においては“上司の社会的支援”が上昇したときに、炎症マーカーが有意に減少した」という[7]。

上司に恵まれない場合はどうすればいいか。「誰かを援助する、という能動的行動を行った人は5カ月後に炎症スコアが有意に下がった(論文投稿中)。ボランティア活動など誰かを手助けすることが自身のポジティブな状態を作り出し、免疫低下にブレーキをかけるのだろう」(中田さん)。職場とは別の場で、気持ちをポジティブにする行動をするのがよさそうだ。

[4]J Psychosom Res. 2016 Dec;91:1-8.

[5]Ind Health. 2011;49(1):116-21.

[6]Psychosom Med. 2007 Apr;69(3):225-34.

[7]Ann Behav Med. 2014 Jun;47(3):335-46.

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