日経Gooday

元の安全な街に戻るように 広がる支援の輪

長年日本の長距離選手たちを支えてきてくれたこの街への感謝と、今回の事件で亡くなられた方々への追悼のため、そして悲しみに沈むこの街の復興を支援するため、4月20日から「BoulderStrong,Japan」という名称のクラウドファンディング(https://readyfor.jp/projects/BoulderStrong_Japan)を立ち上げました。

きっかけは、私が初めてボールダーで合宿をしたときにコーディネートをしてもらったエージェントであり、友人でもある、ボルダーウエーブ代表ブレンダン・ライリーさんからの呼びかけでした。私もブレンダンさんにはたくさんお世話になり、彼のおかげで安心して高地トレーニングに集中することができました。そんなブレンダンさんの呼びかけにいち早く反応したのが、共通の友人である東京マラソンレースディレクターの早野忠昭さんです。

早野さんは、1993年にボールダーにマネジメントオフィスを立ち上げ、マネージャーとして日本の実業団選手をサポートしてきてくれた人でもあります。早野さんが声を上げてくださり、今回私も一緒に代表発起人を務めることになり、高橋尚子さん、野口みずきさんなど元五輪選手や実業団の監督が発起人として参加することになりました。また、日本だけでなく、ボールダーでトレーニングをしたことのある世界各国のランナーの呼びかけで犠牲者とその家族を支える基金が設立されるなど、自分たちを育ててくれた街や人々への支援の輪は広がっています。

クラウドファンディングで集まったお金は、ブレンダンさんを介して、現地の「Community Foundation Boulder County」が運営する「Boulder County Crisis Fund」に寄付します。治安の維持・回復や被害者家族の生活の支援、セラピー支援などに役立てていただければと思っています。おかげさまで、既に目標金額である100万円に到達しましたが、5月末まで継続予定です。コロナ禍の大変なときですが、賛同いただける方はご協力いただければうれしいです。

アスリートと地域との交流の機会がスポーツの意義を深める

ボールダーは私にとってホストタウンのような街ですが、五輪やパラリンピックでも、開催するにあたり全国各地の自治体がホストタウンに登録されています。2019年に日本で開催されたラグビーワールドカップでも、そうした取り組みが見られました。

知的障害のある人の競技会、スペシャルオリンピックスでも、開催の1週間前に、大会に出場する世界各国の選手を地域単位で迎え入れて交流を深める「ホストタウンプログラム」があります。選手たちに早めに現地に入って慣れてもらうことが目的ですが、選手が一般家庭にお邪魔して一緒にご飯を食べたり、お話をしたりして交流を図り、現地の人に見送ってもらいながら、試合会場に向かいます。こうしたプログラムがあることで、スペシャルオリンピックスの認知度が上がり、知的障害への理解が深まり、ひいては障害があっても生きやすい未来へとつながる共生社会への可能性が期待できます。

ボールダーの素晴らしい大自然。(写真提供:株式会社アニモ)

このように、アスリートと現地の方々との交流の機会をつくることで、互いの理解が深まり、感謝や応援の気持ちが育まれます。大きなスポーツイベントでは競技そのものに目がいきがちですが、実はこうした人間の心身のつながりを生む効能こそ、社会のなかでのスポーツの大きな意義だと思っています。

(まとめ 高島三幸=ライター)

[日経Gooday2021年5月17日付記事を再構成]

有森裕子さん
元マラソンランナー(五輪メダリスト)。1966年岡山県生まれ。バルセロナ五輪(1992年)の女子マラソンで銀メダルを、アトランタ五輪(96年)でも銅メダルを獲得。2大会連続のメダル獲得という重圧や故障に打ち勝ち、レース後に残した「自分で自分をほめたい」という言葉は、その年の流行語大賞となった。市民マラソン「東京マラソン2007」でプロマラソンランナーを引退。2010年6月、国際オリンピック委員会(IOC)女性スポーツ賞を日本人として初めて受賞した。

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