ロングセラーの紙皿付き冷凍たこ焼き 販売急増の理由
2009年3月に発売されたテーブルマークの「ごっつ旨い 大粒たこ焼」が、ここにきて急激に販売を伸ばしている。20年の売り上げは前年比129%を達成。20年は冷凍食品全体の売れ行きが好調だったが、データ調査会社True Data(東京・港)によると同商品は21年に入ってからも勢いが加速しており、2度目の緊急事態宣言が出された21年2月には、買い物指数(来店客100万人当たりの売上金額)が前年同月比約1.78倍にもなった。
発売10年以上のロングセラー商品が、なぜいまここまでのヒットを見せているのか。大きな理由として挙げられるのは、コロナ禍をきっかけとして新規顧客層、独身男性層を増やしたことだ。テーブルマークマーケティング戦略部調理加工品カテゴリーマネジャーの福本真之氏は、「発売当初は単身者をメインターゲットとしていた」と言い、当初のターゲットに再度アピールがかなったともいえる。
もともと、09年の発売当初はおつまみ、スナックとしての需要を見込んでいたという同商品。福本氏は、「単身世帯が増加する中、一人暮らしの顧客を狙って、主流だった20個入りなどの中袋タイプではなく、個食タイプで販売した」と言う。1個20グラムほどがトレンドだったところ、1個30グラムほどにして食べ応えのある大きさに。さらに、当時は釣り鐘状の形をした冷凍たこ焼きがほとんどだったが、工場の工程を増やしてまで、たこ焼きの本来の形である球体状にすることを目指し、実現。おつまみとしての臨場感が出せるよう工夫を重ねた。
「紙皿付き」で食後がラクに
「ごっつ旨い 大粒たこ焼」の購入者別の売り上げ構成比でトップに君臨し続けるのは、子供がいる共働き世帯だ。そもそも冷凍食品市場全体のメインターゲット層ではあるが、同商品が発売当初から備えていたもう一つの特徴である「紙皿付き」がカギとなった。「レンジ調理をしたらすぐ食べられて洗い物が出ず、食べたらそのまま捨てられるという点が受け、『休日のお昼くらい楽をしたい』という方々に支持された」(福本氏)
一方で、新型コロナウイルスの感染拡大前に、共働きのファミリー層に次ぐボリュームゾーンとなっていたのは60歳以上の女性で、独身男性の層は構成比で3位だった。しかし20年は、60歳以上の女性と独身男性層の構成比が逆転。発売当初のメインターゲット層を、ここにきて多く迎え入れる形となった。
その要因としてやはり大きいのが、紙皿付きであること。昼食を準備したり、片付けたりという手間を省けることが、新型コロナの感染拡大に伴い浸透した在宅勤務のスタイルにも合っていたようだ。「『リモートワーク時の昼食は時間がないから簡単なものがうれしい』という方々からの支持を集めた」(福本氏)。同商品全体の売り上げが伸長する中、独身男性層の20年の構成比は19年より約4%分増加し、好調をけん引している。
冷凍たこ焼きには、20個入りなどの中袋タイプ、40個入りなどの大袋タイプもあるが、テーブルマークでは「ごっつ旨い 大粒たこ焼」が分類される個食タイプの棚展開を増やすよう16年ごろから営業していた。その成果が出始めたのが、19年ごろから。コロナ禍前に同商品を購入できる土台が整っていたことも、20年以降のヒットを後押しした。
(日経トレンディ 山口佳奈)
[日経クロストレンド 2021年5月13日の記事を再構成]
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