2021/5/20

同僚や部下のお悩み

Q 何かと突っかかってくる同僚を味方につけたい。

A あえて頼み事をして好意を呼び込む「ベンジャミン・フランクリン効果」
◆ベンジャミン・フランクリン

米国の政治家。政敵にコレクションしている本を貸してと頼むと相手は応じ、その後は友好な関係に。「大事な本を貸すくらいだから自分は相手に好意がある」と、認知の転換が起きた。

ウマが合わない、あるいはなんとなく敵視されていると感じる相手にこそ、あえて頼み事をするという方法がある。

普通、嫌いな相手には頼み事をしない。頼み事をされるのだから、自分は好かれているのに違いない。それに応えなければと、人は感じる。

「相手の求めに応えることで、自分の考え(相手が嫌い)と、行動(相手のためにやってあげる)とに矛盾が生じます。その矛盾を心理学では、『認知的不協和』といいますが、矛盾を解消するために認知の転換が起きるのです」。頼み事に応えて相手のために何かしてあげるということは、自分は相手を好きなのだと認知が変わるのだ。「人への頼み事は遠慮しがちですが、ちょっとした頼みなら、頼み事も解決するし、むしろ自分が好かれる効果があります」。

Q やる気のない部下の意欲を引き出したい
A 「ウインザー効果」で第三者の「ほめ」を伝える
◆ウインザー効果
第三者から言われたほうが信頼性が増す心理傾向のこと。小説『伯爵夫人はスパイ』のウインザー公爵夫人の言葉、「第三者の褒め言葉がなんといっても一番効果があるのよ」が由来。

おいしい店を探すときに、口コミサイトを参考にする人は多いだろう。「人は、直接利害関係がない第三者による情報を信頼する傾向があります。これをウインザー効果といいます」。

やる気のない部下に「2日で調べ上げるなんて、すごい」と面と向かって褒めても、素直に受け取れない人もいる。しかし、「マーケティング部の人が、あれを2日で調べ上げたなんて驚きだと言っていたよ」と第三者の言葉として伝えたら、説得力が高まる。「間接的に褒めることで信頼され、それを言ってくれた第三者にも、伝えてくれた人にも好感が生まれます」。

伸び悩んでいる部下を伸ばすには(イラストはイメージ=PIXTA)
Q 伸び悩んでいる部下をなんとかしたい
A 期待することで「ピグマリオン効果」が生まれる
◆ピグマリオン効果
小学校で教師が、生徒に対して期待を持つと学力の伸びに大きな影響があることを、ローゼンタールらが実験で証明した。ギリシャ神話の女神にちなんで、ピグマリオン効果といわれる。

部下を見て伸び悩んでいると感じるとしたら、そこには期待があるということだ。そこで、「この人なら、もっとできるはずなのに(やらない)」と見るのではなく、「この人なら、きっとできる」と思って、見守ってはどうだろうか。

「人が人にレッテルを貼る『ラベリング』によって生まれる、プラスの効果をピグマリオン効果といいます。この人はできるという期待感が、無意識のうちに声や表情、態度によって相手に伝わり、相手はそれに応えようとする結果、実際に成果として表れるのです」

人に期待する気持ちを持つことがスタート。「部下の言動を否定しない、『そうだね』と相づちを打つだけでも効果があります。相づちは会話をスムーズにし、良い人間関係を築く上で、非常に重要なノンバーバルコミュニケーションなのです」。

夫や子どものお悩み

Q ガミガミ言いたくはないけれど、もっと夫に家事をしてほしい
A 小さな頼み事からスタート。「フット・イン・ザ・ドア ・テクニック」
◆フット・イン・ザ・ドア
セールスマンが訪問販売をする際に、ドアに片足を入れて閉まらないようにしてから商談に入ったことに由来。相手が承諾しやすい要求から始めて、次第に要求を大きくしていく交渉術。

家事に不慣れな夫には、ちょっとしたお願い事から始めよう。例えば、「飲み終わったカップは下げてね」からスタートし、次は「下げたカップは洗っておいて」と頼む。「最初に小さな要求を引き受けると、次にもう少し大きなお願いをされても断りにくい。一度『いいよ』と言った自分の像を壊したくないという、『一貫性の原理』が働くからです。こうした説得方法をフット・イン・ザ・ドアといいます」。

一方、ドア・イン・ザ・フェースという手法もある。こちらは拒否されることを前提に、わざと大きな依頼をして、次に小さな依頼をする。人は依頼を断ると何らかの罪悪感を持つ。その罪悪感を埋めるために引き受ける心理を利用したもの。「これはタイミングが大事で、断られた後、あまり間を置かずに『じゃあこれを』と依頼するのが効果的です」。

Q 謝恩会や卒園式など、パーティーの幹事が苦手
A 「ピーク・エンド」の法則。最後が一番印象に残る。
◆ピーク・エンド
ノーベル経済学賞受賞者で心理学者でもあるダニエル・カーネマンが提唱。冷水に手をつける実験や騒音による不快感の調査などから、最後の体験が全体の印象に影響を与えるとした。

みんなに満足してもらう会にするにはどうしたらいいか、幹事としては悩みどころだ。そこで旅行の思い出や、過去のデートの記憶を振り返ってみよう。「おそらく印象に強く残っているのは、一番盛り上がったとき=ピークと、最後=エンドでしょう。これをピーク・エンドの法則といいます」。

ピークは、人によって何をピークと感じるかコントロールできないとしても、終わりは、幹事ならセッティングしやすい。

例えば飲食店に行ったとき、料理は普通でも、帰り際にシェフや女将が見送りに出てきたら、それだけで店の格や印象がアップする。同様に、食事会でもパーティーでも、なんとなくお開きにするのではなく、感謝の気持ちを込めた最後の挨拶をきちんとする、丁寧に見送るなどの振る舞いや別れ際の印象で、参加者の満足度は高くなる。

Q よその家に比べてのんきなわが子にイライラ。
A 「フレーミング効果」で見方を変えよう
◆フレーミング効果
認知バイアスのひとつで、物事へのスポットの当て方で印象が変わること。「1日たった300円分」とすることで「年間10万9500円」よりも安く感じさせるなど、マーケティングでも使われる。

テストの点数が低くても気にしない、のんきな子どもの態度にイライラを募らせることもあるだろう。しかし、「物事のどこにフレームを当てるかで、見え方は全く違ってきます」。

例えば、大事故に際して、死傷者数と生存者数、どちらを大きく報道するかで、ニュースを聞いたときの心理的な印象は大きく違う。同様に、100点満点なのに20%も間違えたと見るか、8割も正解したと見るか。結果は同じでもポジティブな見方をすることで、親自身の気持ちも、子どもの肯定感も大きく変わってくる。

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