米国では、成功の鍵を握るのは「才能か、努力か」という論争が行われてきた。同博士の研究がこれほどまでに注目を浴びたのは、従来見過ごされてきた第3の因子の存在を明らかにしたからだ。それが「GRIT=やり抜く力」だ。

同著には、努力と才能と達成の関係を表す方程式が登場する。

才能×努力=スキル  スキル×努力=達成

2つの式が意味するのは、努力によって初めて才能はスキルになり、努力によってスキルが生かされ、大きな成果をあげられるということ。つまり、才能があっても努力をしなければ宝の持ち腐れになるし、上達するはずのスキルも努力なしには頭打ちになる。同博士の言う「やり抜く力」とは、自ら定めた目標に向かって、長年、情熱を失うことなく、努力を続けられる力のことだ。GRITのGはGuts(根性)、RはResilience (復元力)、IはInitiative(自発性)、TはTenacity(執念)を意味する。

“tenaciously”はゴールドマン・サックス社内の日常会話で頻繁に登場すると話す上田さん

上田さんによると、Tenacityの副詞である“tenaciously”は、実はゴールドマン・サックス社内の日常会話で頻繁に登場するという。

「日本ではなじみのない単語ですが、当社内ではすごく使われます。『Aさんはtenaciouslyに(粘り強く)お客さんのもとに通ってるね』『Bさんはtenaciously にこの案件に取り組んでいる』とか。営業であれ市場分析であれ、自分に課せられた課題に対し、小さな挫折を繰り返しながらも粘り強く努力していくことが評価されるカルチャーがあります」

同社に採用されるような、一般的には極めて優秀と見なされる人材に対し、改めてこの本を推薦する理由はどこにあるのか。上田さんは言う。

「確かに学業で優秀な成績を収めた人も多いのですが、それが必ずしも社会人としての成功を約束するものではないということを、心に刻んでほしいのです。この本では人生をマラソンに例えています。勉強は一回のテストでいい点を取ればいいかもしれませんが、キャリア形成はマラソンと同じく長期的なもの。息長く努力を続けられるかどうかが大事なのです。同時に、この本ではGRITは後天的に伸ばすことができると強調されている。そのメッセージにも是非、目を向けてもらいたいと思っています」

ゴール設定が重要 人事制度も変更

同著ではGRITを、内側からと外側から伸ばす方法を紹介している。内側から伸ばす方法は「高い目標を設定しクリアする練習を習慣化する」「自分の取り組みが大きな目的とつながっていることを意識する」など。外側から伸ばすには、「親や教師、上司、メンターや友人など周囲の人々が重要な役目を果たす」と指摘する。

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