やよい軒、弁当を定食スタイルに きっかけは女性
持ち帰り弁当チェーン「Hotto Motto(ほっともっと)」などを運営するプレナスは2021年4月27日、定食レストランチェーン「やよい軒」で、弁当に代わる新たな持ち帰りサービスとして「おうち定食」を開始した。持ち帰り弁当の女性客が急増し、昼夜の売上比も逆転したことに定食の需要を見いだしたという。
弁当を販売して分かった定食の需要
全国に約370店舗を展開するやよい軒は肉、魚、野菜などの食材を使った定食をさまざまな調理方法で提供しており、通常メニューだけで24種類を数える。新サービス「おうち定食」は、そのラインアップのなかで特に人気の高い「しょうが焼定食」(640円、税込み、以下同)、「サバの塩焼定食」(790円)など14品目でスタートした。
コロナ禍で客足が遠のき、苦境に陥った飲食店が持ち帰り弁当に活路を見いだした例は枚挙にいとまがない。20年の売り上げが前年比で約2割減となったやよい軒も、20年4月からは「しょうが焼弁当」などの弁当を販売して持ち帰り需要に対応してきた。ところが、持ち帰り弁当を販売するようになって見えてきたのが、家庭における定食の需要だ。
やよい軒が持ち帰り弁当を始めてからは女性客の比率が高まり、約7対3だった男女比が5対5に近づいたという。また従来は6対4だった日中と夕方以降の売上比が逆転して4対6になった。
プレナス マーケティング本部長の広藤明常務は「弁当購入者の家族構成を見ると単身者は38.3%にすぎず、6割以上が家族と暮らしていた。家族がいれば、その分も買って帰ることになる。当然、持ち帰りの売上比は夜のほうが大きくなる」と、売上比逆転の理由を説明する。
ご飯へのこだわりが生んだ定食スタイル
夕食に弁当を食べる消費者がいるなら定食の需要もあるとみてスタートしたのがおうち定食だ。とはいえおうち定食は、単に弁当のご飯とおかずを別々の器に盛って味噌汁を付けただけのものではない。想定以上の反響があった持ち帰り弁当をわざわざ定食スタイルに変更した理由には、やよい軒ならではの並々ならぬ「ご飯へのこだわり」がある。
やよい軒の定食はご飯の「おかわり自由」をうたい文句にしており、それが「おなかいっぱい食べたい男性」に刺さって人気となった経緯がある。だからこそ店内食の約7割を男性客が占めるのだ。逆に、持ち帰り弁当で女性客の比率が高まったのは「おかわり自由」に魅力を感じていなかった女性たちがやよい軒を利用するようになったから、とも考えられる。
ご飯をおなかいっぱい食べられるのはやよい軒の魅力の一つだが、弁当での販売となると大盛りにするにも限界がある。一定量以上を詰め込むと、米粒がつぶれて店内食のような「ふわふわ感」がなくなってしまうのだ。また持ち帰り弁当の場合、おかずによっては汁がご飯のほうに流れ込んでしまう心配もある。
自社の水田や精米所を持ち、金芽米(胚芽の基底部である金芽を残す精米方法によって栄養価とおいしさの両立を実現したコメ)を採用するなど、ご飯にこだわるやよい軒として、ぜひとも実現したかったのが定食スタイルなのだ。
店内食に劣らない「おかわり自由」の満足感を持ち帰りでも提供するため、やよい軒では「普通盛」「大盛」「超特盛」の3種類のご飯を同価格とし、茶わん約2.5杯分(約375グラム)という「超特盛」については米粒がつぶれないよう、一回り大きい専用の容器を用意した。
定食スタイルの課題の1つは、弁当よりかさばること。例えば会社帰りに家族4人分の定食を買って帰るとなると、通勤かばんが邪魔くさく思えてしまうかもしれない。ただしこの点については、駐車場のあるロードサイド店が半数近くを占めるやよい軒にとって、都市部のファミリー層限定の課題とも言える。やよい軒はデリバリーサービスの出前館、Uber Eats(ウーバーイーツ)と提携しているので、持ち帰る代わりに配達してもらうという選択肢もあるだろう。
また定食スタイルの場合、プラスチック容器の数が増えるのも気になる点だ。プラスチック削減が叫ばれている昨今、時流に逆らったサービスという印象を持たれてしまう懸念もある。これについて広藤常務は「いつまでとは言えないが、紙の容器に切り替える方向で検討している」と話した。
サービス開始時点でのおうち定食は14種類だが、期間限定のメニューも含め、将来的には数を増やしていく予定。おかずによっては持ち帰りに向かないものや、店内食とは異なる調理手順が必要になるものもあるため、研究を続けているとのことだ。
(フリーライター 堀井塚高、写真提供 プレナス)
[日経クロストレンド 2021年5月7日の記事を再構成]
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