今やCDセールスだけではなく、音楽配信や動画サイトなどの様々なヒット要素が絡み合っている音楽業界。その中で、カラオケ部門は、新型コロナウイルスの感染拡大予防として、臨時休業や営業時間の短縮が要請され大きなダメージを受けた。この1年間でカラオケヒットがどのように変化しただろうか。音楽マーケッターとして市場分析を行っている臼井孝氏が分析する。[※特に注記がない場合、本文中の『』はアルバム名、「」は曲名を示している]
2020年は配信中心だがCDもある曲が上位
まず、コロナ自粛要請直前となる20年2月度「Billboard JAPAN HOT 100のカラオケランキング」のトップ20を見てみよう(調査期間は20年1月27日から2月23日)。
1位は、ストリーミングで総再生回数が5億回を超えたOfficial髭男dism「Pretender」、2位は、ダウンロードで300万件を超えた米津玄師「Lemon」(こちらは、ストリーミング解禁が2020年8月だったが、それでも21年2月に1億回再生突破)、さらにダウンロードミリオン突破のLiSA「紅蓮華」が3位、ストリーミング3億回突破のあいみょん「マリーゴールド」とKing Gnu「白日」が4位、5位と、昨今の配信ヒットが並ぶ。
最もCDシングルが売れたのが「Lemon」で、それでも累計約65万枚(サウンドスキャン調べ、以下同)。ストリーミング国内最大ヒットの「Pretender」も5億回以上聴かれていても、CDはせいぜい5万枚前後。20年以降も、ジャニーズ系やAKB&坂道系などCDシングルのミリオンヒットは出ているが、カラオケヒットはすでに配信ヒットと密接になっている。90年代のように、カラオケレパートリーを増やそうとCDシングルを購入するというのは、はるか遠い昔というのがよく分かる。
それでも、これらの作品は、いずれも過去にCDシングルまたはCDアルバムに収録された楽曲であり、CDショップやネット通販で購入することも可能だ(ただし、「白日」はCD化まで約11カ月間は配信限定だった)。
次に、21年2月度のカラオケランキングを見てみよう(調査期間は21年2月15日から3月14日)。