「最初の一歩」がつくる大きな未来

坊垣さんが実際に数多くのプロジェクトに関わる中で感じたのは、「最初の一歩」の重要性でした。もちろん、プロジェクトの成功自体を喜んでもらえることにもうれしく感じるようですが、プロジェクトが終了してから数年後に、実行者のかたから「あの時の結果がもとで、新しい提携先ができた」「新しいアイデアが生まれた」と言われることが最もうれしい瞬間だそうです。

実は、マクアケ自体も最初はサイバーエージェント社内の事業から始まっています。当時は、新しいプロジェクトが立ち上がるたびに社内を練り歩いて、チケットや商品を売り歩いていたようです。「まずはやってみる」ことで、外部のフィードバックや反応を反映しながら改善を重ねて大きくしていきました。

プロトタイプの段階で出して、応援コメントやサポーターのフィードバックを得ながらアップデートしていく、正式リリースには改善して送り出す。そのように、一旦はベータ版からリリースして「リスク」を減らすのは、ソフトウエアではよくある開発手法です。
(法則8 リスクを減らし、「スモール・スタート」で始めよう 244ページ)

「これからの社会では、オンラインと実店舗での連携が当たり前になっていきます。例えば、実店舗の良さは、物理的に商品を触ったり試したりできるところです。一方で、間に仲介する人を挟むことも多くなるので、作り手と同じような思いを伝えられるかどうかは重要なポイントになってきます。足りない部分は相互に補うなど、双方のメリット・デメリットを洗い出し、再定義することで、世の中の変化に対応していくことが重要です」と坊垣さんは話してくれました。

本書は、別の本の著者が開催したセミナーの登壇者として坊垣さんが登壇していたことがきっかけで生まれました。すでに2年近くも前になりますが、坊垣さんが語るプロジェクトや事業に対する熱い思いに心が動かされたのを思い出します。

本書の制作過程は、私自身も感動の連続でした。書籍で紹介するプロジェクトを取材するなかで、数多くの実行者と製品に出会いました。購入して使用した商品は「本当にいい」と思うものばかり。出会った実行者の方々は、同世代の若手からベテランの方まで多様でしたが、「本気の思い」が伝わるものばかりでした。気付けば、私も彼らの「ファン」になっており、だからこそ本書という1つのプロジェクトを全力で成功させたい、と思いながら編集にあたっていました。

先が見えない社会に振り回されるのではなく、最小のリスクで時代にあった売り方を考える。本書を読めば、新たな出会いや挑戦に、必ず勇気をもらえるはずです。

(日本経済新聞出版 雨宮百子)

一日に数百冊が世に出るとされる新刊書籍の中で、本当に「読む価値がある本」は何か。「若手リーダーに贈る教科書」では、書籍づくりの第一線に立つ出版社の編集者が20~30代のリーダーに今読んでほしい自社刊行本の「イチオシ」を紹介します。

Makuake式 「売れる」の新法則

著者 : 坊垣 佳奈
出版 : 日本経済新聞出版
価格 : 1,760 円(税込み)

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