豊富な資金力で自由なテーマ描けるNetflix作品

――『ファーザー』のアンソニー・ホプキンスをはじめ、有力候補が並んでいる主演男優賞での注目はどなたですか?

『ファーザー』配給:ショウゲート 5月14日(金)、TOHOシネマズ シャンテ他 全国ロードショー (C)NEW ZEALAND TRUST CORPORATION AS TRUSTEE FOR ELAROF CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION TRADEMARK FATHER LIMITED F COMME FILM CINE-@ORANGE STUDIO 2020

宇垣:私は、昨年8月に(40代の若さにしてがんで)亡くなった『マ・レイニーのブラックボトム』主演のチャドウィック・ボーズマンに取らせてあげたいですね。ただ、それだけが理由ではなくて、この作品での彼の演技は筆舌に尽くしがたいくらいのエネルギーと絶望があり、本当に鳥肌が立つような演技でした。動きのない作品であそこまで人を引き付け、息ができないくらいの気持ちにさせるほど熱中させてしまうのは、やはり彼の熱演あってこそ。受賞にふさわしい演技だったと思っています。

Netflix映画『マ・レイニーのブラックボトム』独占配信中

――主演女優賞は、いかがでしょうか?

カビラ:『ノマドランド』が作品賞を取るとすれば、極めて可能性が高くなるのが主演のフランシス・マクドーマンド。主演女優賞には3度目のノミネートですが、ここで受賞するとなると、3度目の受賞となるので、100%の受賞確率というのは強すぎますよね。もはやメリル・ストリープを超える勢い(笑)。でも、身をていしての演技はすごかったですね。

ほかには、『マ・レイニーのブラックボトム』のビオラ・デイビスも圧倒的な才能を見せていて素晴らしいなと思いました。目だけで、背筋が冷たくなるような「圧」を表現されていたのは、見事のひと言に尽きます。

――先ほども話題に出ましたが、今年は、Netflix作品『Mank/マンク』が最多ノミネートとなりました。Netflixの強さについてはどう感じていますか?

カビラ:まずは、圧倒的な資金力がある点は、ほかとは比較にならないですよね。さらに、ハリウッドの因習からも自由で、描きたいテーマも自由、社会的にどんな物議を醸そうが自由、と。この立場は強力だなと思います。これは映画評論家の町山智浩さんがおっしゃっていたことですが、これまでのハリウッドでは映画館の組合と手を組んで一緒にやってきたからこそ、映画がここまでの隆盛を誇ることができたと。

なので、Netflixの出現によって変わってしまったハリウッドの伝統をどうしてくれるんだ、と言いたい人の気持ちもわかりますが、もう引き返すことはできないでしょうね。

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宇垣:そうですね。それでも、みなさんで仲良くやっていっていただけるといいんですが……。

カビラ:映画は劇場で見るものという概念を変革してしまったNetflixですが、せっかくいい作品を生み出しているので、個人的には劇場でも公開していただきたいなというのはあります。

宇垣:限定でもいいので、それはぜひお願いしたいですね。

アカデミー賞はジェンダー・ギャップをどう乗り越える?

――ハリウッドも時代とともにいろんな変革を求められています。2024年の第96回からは、作品賞に多様性を含めた新基準を設けることになりました。そのようなアカデミー賞の姿勢については、どう感じていますか?

宇垣:すべての人に対して平等であるべきだというのは、これまでもずっと言われてきたことですし、私もそうあるべきだと思っています。とはいえ、物事というのはなかなか気持ちだけでは変わりませんので、そうやって基準を作っていくことから始めるのは大事ではないかなと。そういう意味でも必要なことだと感じています。

――世界三大映画祭の1つであるベルリン国際映画祭が、男優賞と女優賞を廃止し、性別に関係なく表彰する「主演俳優賞」と「助演俳優賞」を新設すると発表しました。今後、アカデミー賞もそのようになっていくと思われますか?

カビラ: それについてお答えする前に、南カリフォルニア大学のジャーナリズムとコミュニケーション専門の学部が行ったある調査についてご紹介したいと思います。その調査というのは、2007~15年(2011年を除く)の各年でトップ100に入った映画に登場する3万5000人以上の役柄を性別や民族、LGBT(性的少数者)であるかどうかなどで分けたり、キャストやスタッフの男女比を調べたりしているものです。

それらの結果を見ると、まだまだ驚くほどのジェンダー・ギャップがあることに気付かされます。性別による区分をなくして部門をまとめるということは、当然ノミネートされる人数も半分になりますよね?、でも、この状況で実施すれば、女性たちはさらに不利な状況に追い込まれてしまうのではないかと。そういうデータを見ると、いまは少し時期尚早かなという気がしています。「究極の公平性とは何か?」という議論になりますよね。

――いまの状況では女性たちはさらに不利になると。そうした視点も大事ですね。ところで、ほかに注目している部門や作品はありますか?

宇垣:私は長編アニメ映画賞の『ソウルフル・ワールド』。新型コロナウイルスの影響で劇場公開されませんでしたが、映像も音楽も素晴らしい作品なので、これこそ映画館で見たい作品でしたね。あとは、同じ部門の『ウルフウォーカー』も絵が美しかったので、アニメ好きとしてはこれが評価されるといいなと思っています。

――日本の歴代興行収入1位の記録を塗り替えた『鬼滅の刃』は残念ながら落選しました。これについてはどう思われましたか?

宇垣:もちろんアニメーションとしては素晴らしい作品だと思います。ただし、当たり前のようにストーリーや背景を知っている日本人に比べると、アメリカの方々にはそれがないので、そこが難しかったのかなと。でも、あのアニメーションの美しさと音楽のマッチの仕方は独特なものがあるので、脚本とアニメーションの制作を担った「ufotable」にはいつか日の目を見てほしいなと思っています。

カビラ:僕は、監督賞と同時に国際長編映画賞にノミネートされた『アナザーラウンド』。見ているだけで酔っ払っちゃうくらい主人公たちがお酒を飲んでいるんですが、本当におもしろい映画でした。日本では9月に公開されますので、ぜひ注目してください。

――最後に、授賞式をどのように楽しんでほしいか、一言メッセージをお願いします。

カビラ:今年は日本でも劇場やネット配信などで事前に見られる作品が多いので、できれば、授賞式までにご覧になって臨んでいただきたいですね。ご家族とオスカーパーティーをしながら、それぞれの好みや予想について話し合っていただくとより楽しめると思います。

宇垣:今年はいままでとはちょっと違うノミネーションがあったり、この状況だからこそ楽しめる部分があったりすると思います。そういう部分を見つけていただけるといいかなと。私もみなさんと一緒に楽しみたいと思っています。

生中継!第93回アカデミー賞授賞式
4月26日(月)午前8:30 [WOWOWプライム][WOWOWオンデマンド]
案内役:ジョン・カビラ、宇垣美里
スペシャルゲスト:中島健人(Sexy Zone)
スタジオゲスト:行定勲(映画監督)、河北麻友子
リモートゲスト:町山智浩(映画評論家)

レッドカーペット生中継!第93回アカデミー賞授賞式直前SP
4月26日(月)午前7:30 [WOWOWプライム] [WOWOWオンデマンド]
案内役:ジョン・カビラ、宇垣美里
スペシャルゲスト:中島健人(Sexy Zone)
スタジオゲスト:行定勲(映画監督)、河北麻友子
リモートゲスト:町山智浩(映画評論家)

(ライター 志村昌美、写真 小川拓洋)