いよいよワークを開始する。まず、SDGsの17の目標のなかから、自分の感情が動いたり、関心を感じたり、将来関わりそうだなと予感したりしたものに丸をつける。そしてその課題の当事者の状況をレゴで表現する。与えられた時間は8分間。直感的に手を動かすようにと、名塩さんが念を押す。

それぞれ作品ができあがったら、1分間でグループのメンバーに作品の意図を説明する。教室のあちらこちらから、「働き方、ブラック企業」「いつでもどこでもきれいな水が飲めるようになるといいな」などのキーワードが聞こえてくる。

説明が終わると、グループごとにメンバーがつくった作品を1カ所に並べてみる。そして社会課題として強く影響し合う作品同士を近くに、あまり関係がない作品同士を遠くに配置するようにと、名塩さんは指示を出した。与えられた時間は5分間。「これとこれ、関係強いよね」「え、こっちのほうが関係あるんじゃね?」のような対話がなされる。

密接に関係する作品は合体させてもいい

そこでワークシートにある2つの記入欄を埋める。1つめには、将来どういう社会課題に関わりたいと思ったか、そしてそれについてグループのメンバーにどう説明したのかを記録する。2つめの記入欄には、自分の作品と関係が深かった作品とその関係性を記入する。

「友達が作品で表した課題を解決しようとすると、自分が解決したかった課題が解決できなくなるという状況もあったと思います。それが社会のシステムというものです。いろんなことが利害関係で密接に結びついていますから、何か1つの問題だけを手早く解決するということはできないんですね。そういう視点をもってほしいということで、今日やってみました。次回は将来のテクノロジーのことなんかについてやっていきたいと思います」

「こちらを立てればあちらが立たぬ」を実感

授業後に、名塩さんは堰(せき)を切ったように語り出した。

「いままでおおたさんに取材してもらった数学の授業とは雲泥の差ですよ。探究基礎は今年で4年目ですが、いまだに課題だらけで手さぐりの授業です。私がいちばん探究していると思います(笑)」

カリキュラムの全容としては、中3で探究学習の基礎を学び、高1~2では自分で課題を設定して1年半をかけて調べ、考察し、発表するという流れになっている。中3では、「探究基礎」と並行して「ミニ課題探求」と呼ばれる少人数のテーマ学習選択授業も行われる。さきほどの授業の裏で残り半分の中3生は「ミニ課題探求」の授業を受けていたわけだ。

「聖光学院として探究学習に取り組む目的を畢竟(ひっきょう)すれば、質問力を上げることにつきます。高2~3の生徒たちを見ていると、問いを立てる力というか課題設定能力というか、そういうものがいちばん欠けています。デザイン思考やプレゼン手法の授業を外部の企業にお願いしていたこともあったのですが、うまくいきませんでした。それで、私がレゴシリアスプレイのファシリテーター(促進役)資格を持っていたので、それを利用して授業を組み立てることにしました」

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白黒はっきりするものを好む生徒たち
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