居心地変わったクラブハウス 話術に通じる6つの課題

大勢を相手に話すSNSでは相応の話術が求められる(写真はイメージ) =PIXTA
大勢を相手に話すSNSでは相応の話術が求められる(写真はイメージ) =PIXTA

アメリカ発の音声SNS「Clubhouse(クラブハウス)」の居心地に変化が生じているように感じる。日本で盛り上がったのは、1月に入ってからだったので、わずか3カ月程度での変化だ。あれほどもてはやされていたのに、どうしてこんなに早く雰囲気が変わってしまったのか。いくつか挙げられそうな、その理由は対話コミュニケーションの注意点を浮かび上がらせる。

「専門家の内輪トークを聞ける」「ざっくばらんな雑談調で聞きやすい」「BGM代わりに流しっぱなしにしておける」――。かつてクラブハウスの魅力として挙げられてきた特徴だ。クラブハウスというネーミング通りのプライベート感もこれまでになかった特色といえるだろう。

あらためてしくみを説明すると、クラブハウスでは、たくさんのバーチャル談話室(「ルーム」と呼ぶ)が開かれていて、それぞれに異なるテーマやメンバーで音声対話が楽しめる。テーマは趣味や仕事など幅広く、参加者も固定していない。文字や映像を使わない、声だけのSNSだ。米国で始まり、日本でも年明けごろから火が付いた。

しかし、直近の様子をみる限り、春先の熱気は感じにくい。私が個人的に感じる変化は、「セミナーや講座に似たルームが増えた」という点だ。こうした空気の変化に影響しているように思えるのは、各ルームの進行役にあたる立場の「モデレーター」と呼ばれる人たちの振る舞いや言葉遣いだ。

もちろん、参加できたルームはそう多くないので、全体の傾向をつかむのは難しい。あくまでも私が接した数少ないルームでの印象だという点をあらかじめお断りしておく。

会話の細部を明かすのは規約に反するうえ、プライバシーの問題もあるので、ここでは差し控える。しかし、居心地が変わった主な原因は、しゃべりのトーンや、モデレーターの語り口、話の進め方、ルームの雰囲気など、話題そのもの以外の要素にあるように思えるので、今回はそういった部分を主に取り上げてみたい。

・モデレーターの語り口

各ルームの仕切り役にあたるモデレーターは、ルームを設定した人と同じケースが多く、全体の流れを方向付けする格好で、トークを動かしていく。語り口はそれぞれに味がある。だが、一部のモデレーターは指導者めいたしゃべり方を選ぶ傾向がある。モデレーターが先生で、参加者が弟子や生徒といった感じの構図だ。

この「講義」形式のルームでは、立場上の都合からか、モデレーターの語り口が「上から目線」になりやすい。大半の聞き手よりもモデレーターのほうが話題の分野に通じているケースが多いのも、レクチャー口調の理由だろう。最初から「セミナー」と割り切って聞けば、大して気にならないのかもしれないが、通りすがりに聞くと、鼻につくことがある。

・話の進め方

モデレーターの中にはキャスターやお笑い芸人のような、しゃべりを本業とする人もいなくはないが、必ずしもプロフェッショナルばかりではない。そのせいもあってか、進行はしばしばよどむ。初めて言葉を交わす相手が多いルームでは、聞き手との距離感を測りかねていることもあり、どこかよそよそしいやりとりが続くことも。深まらないトークを聞いていると、じれったい気分になりがちだ。

もともと会議とは違って、何らかの結論を時間内に導くような話ではないので、やりとりは蛇行、脱線することが珍しくない。むしろ、それが持ち味ですらある。だが、ある種の「答え」を期待して聞く人にとっては、この先の見えない感じが時にいらだちを誘うようだ。演目と観客のミスマッチに近いずれは聞き手側に「まどろっこしい」「ぐだぐだ」といった不満を生みやすい。

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根拠があいまい、「意識高い系」の論調
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