日経クロストレンド

ドリップの様子を見せるための静電気対策

ツインバード工業マーケティング本部マーケティング部の小林由希奈氏は「コーヒーを入れる時間を楽しむために、香りも広がってドリップの様子が見えるすき間を設けるアイデアにたどり着いたのですが、これを実現するのに苦労しました」と話す。コーヒー豆を挽くと静電気を帯びてしまい、そのままでは粉が飛び散ってしまう。これを技術的にクリアするのが大変だったのだ。

静電気対策は至ってシンプルだ。ドリッパーの樹脂に金属が練り込まれており、ドリッパーが本体の除電レバーに触れると静電気が逃げるようになっている。ミルの上部にも除電部品が付いているという。静電気を帯びるのなら、セルフのガソリンスタンドにある静電気除去シートのように逃がせばいい、と考えれば分かりやすい。だが、導電性樹脂と導電レバー、さらには導電材料製の底板まで導線を経由してアースしている徹底ぶりには恐れ入る。「この仕組みは特許を出願(特開2020-031852)している」(小林氏)とのことだ。

本体奥に、静電気を除去するための除電レバーが配置されている
導電性樹脂を用いた4~6杯取り用のドリッパー
こちらは1~3杯取り用のドリッパー。4~6杯取り用に重ねて使うのがユニーク

テレビ番組で紹介されて大ヒット

発売は2年以上前にもかかわらず、21年に入ってすぐにCM-D465BとCM-D457Bの2モデルが大人気になったのは、20年12月30日に放送されたテレビ番組「アメトーーク!」(テレビ朝日)の「家電芸人」コーナーに、CM-D457Bが登場したのがきっかけだった。元料理人でお笑いコンビ「和牛」の水田信二氏がお薦めのコーヒーメーカーとして紹介。監修に携わった田口護氏が2000年の九州・沖縄サミット(主要国首脳会議)でコーヒーをサーブしたところ、コーヒー嫌いの米クリントン大統領(当時)がそのコーヒーを飲んだというエピソードも語られた。

「コーヒー好きの間では人気があって徐々に浸透してきた中、味にこだわりのあるお笑い芸人さんが愛用されていて、これは本当にいいと紹介していただいたのがヒットの大きなきっかけです。21年の年始の販売台数は、前年の約10倍まで伸びました」とツインバード工業マーケティング本部マーケティング部部長の金東建氏は語る。

「おいしいコーヒーメーカーを探しているコーヒー好きの方には、既に届いていたと思います。ニーズはありましたが、これまで届いていなかった方にまでしっかり届いたという印象」(小林氏)

ツインバード工業マーケティング本部マーケティング部の小林氏と、同社の知名度を上げたコーヒーメーカー(左がCM-D465B、右がCM-D457B)

売れ行きが急上昇した背景にテレビ番組の後押しはあったにせよ、CM-D465B/CM-D457Bが成功したのは、何といっても田口護氏が監修し、太鼓判を押したところにある。

「他社からも共同開発をしたいという話がありましたが、田口先生も中途半端なものは出したくないという気持ちがあったそうです。当社の開発メンバーが試作品を持って、ぜひ力をお貸しいただきたいとお願いしたときに、頑張って作った試作品の構造の部分を評価していただき、一緒にやっていただける流れになりました。ひたむきな職人のものづくりを田口先生に評価していただいたのが大きいと思います」(小林氏)

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機械で実現した田口氏のノウハウ
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