何の就職先の当てもないまま、帰国しました。いくら東大を卒業し、留学経験があっても、30代のキャリア経験のない男に門戸を開いてくれる大企業や公的機関はありません。見かねた父が北陸地方にある電機メーカーを紹介してくれました。プログラマーを求めていました。研究にはコンピューターを活用しますから、プログラム言語は自由に書けました。しかし、結局面接はすっぽかしました。

なぜか分かりませんが、いまさら組織に属すのが嫌だったのかもしれません。ただ、自分の力で食わなくてはいけない。科学誌の編集者と知り合い、翻訳などのライター業務を始めました。広告業界の関係者とも懇意になり、ソフト開発にも取り組みました。視聴率予測プログラムなどを次々開発しましたが、当時は珍しかったからか、ずいぶん稼ぎました。今ならITベンチャーを起こすところですが、起業家という発想もない時代。惜しいことをしました(笑)。

その後、サイエンスライター兼フリープログラマーとして生きてきました。最新刊は3月に発売した「生命とは何か」(ポール・ナース著)の翻訳、数々の本の執筆や翻訳を手掛けました。

2016年に「YESインターナショナルスクール」というフリースクールを開校した。

今、最も力を入れているのは子供たちの教育です。今は横浜と東京に拠点があります。娘が1人いますが、行かせたい小学校がなかったのです。それじゃ、自分たちで学校をつくろうと、多くの仲間の協力を得て開校しました。

未来の人材育成に必要なのは、国語と英語、そしてプログラミングだと考え、そこに注力しています。先生が上から目線で教えるのではなく、本人が興味を持って自主的に学べるように常に工夫しています。好きなことをとことん探究し、生きる力を学んでほしい。筑波大付属や東大の教養学科のような自由闊達な雰囲気をお手本に、今はひたすら、探究心の旺盛な子供の育成に力を注いでいます。

(代慶達也)

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