30回イベント企画した学生 就活で得られない成長とは通年採用時代の就活のトリセツ(14)

2021/4/7
キャリアキャンプ主宰の神谷さん(写真左)と、イベント運営を担ってきた筑波大学大学院生の松原さん
キャリアキャンプ主宰の神谷さん(写真左)と、イベント運営を担ってきた筑波大学大学院生の松原さん

こんにちは、法政大学キャリアデザイン学部教授の田中研之輔です。新1年生が入学するシーズンになりましたが、新型コロナウイルスが収束しないなかで、大学生活に不安を抱える人は多いのではないでしょうか。今回は、コロナ下でも、あるコミュニティで成長した学生の話をしたいと思います。

「とにかくなんでもやってみようと動き出した1年でした」と語るのは、筑波大学大学院2年(生命地球科学研究群)の松原咲樹さん。私が初めて松原さんと話したのは「Career Camp」、通称キャリキャンです。

キャリキャンは全国60以上の大学から150人近くの学生が集まってキャリアについて考える「インカレ」コミュニティです。開催場所はZoom。ですから、実はまだ一度もリアルにお会いしたことがありません。

キャリキャンは就活のためのコミュニティではなく、学生が社会に出て活躍する力をつけるためのコミュニティです。2020年3月にスタートし、約1年が経過しました。オンライン開催のため、今では北は北海道から南は沖縄、海外の学生も参加しています。学年もバラバラで、大学1年生から大学院2年生までが集まっています。

コミュニティの時代と言われますが、このような特徴を持った団体を私は他に知りません。社会人メンバーはスタートアップ経営者や大企業の人事担当など、多様なバックグラウンドを持った100人ほどが全員ボランティアで参画し、大学生の中長期でのキャリア開発を支援しています。

イベントの様子。最上段の中央が主宰の神谷さん。参加費は月額1500円。「この1年間はほぼ利益が出ていない状態。今後は持続的な場にしていくために理念に共感してくれる企業に限定し、協賛を募る予定」(神谷さん)という=キャリアキャンプ提供

今回は松原さんと、人事コンサルタントでキャリキャン創設者の神谷潤さんにインタビューを行いました。私も定期的にキャリキャンに参加し、学生たちと「これからのキャリアの築き方」や「社会に出て活躍する方法」について対話を重ねています。

新型コロナウイルス感染拡大が起こる前に神谷さんは、学生と社会人とがリアルに交流する場を年間10回以上開催していました。これをコミュニティにしようとしたのが20年の年始。もともと対面での実施を構想していたそうですが、コロナ感染拡大によって、オンラインに変更。学生自身も運営に参画し、神谷さんが主催する勉強会に加えて、学生たちも様々な部会を企画して運営しています。日記部、英語部、読書部、ビジネススクール、著名人を招いたイベントなどがあります。

松原さんは学生メンバーのリーダー格として、運営の役割を担い、イベントの企画や当日の進行サポートをしてきました。どんな成長があったのか、早速見ていきましょう。

――松原さんはなぜキャリキャンに参加しようと思ったのですか。

松原 キャリキャンに出会ったのは大学4年生の3月でした。当時の私は、東京で訪日外国人に声をかけ、漢字の名前をプレゼントしながら世界中に友達を作る活動をしていました。ただ、3月ごろからコロナの影響で訪日外国人の数もどんどん減少。活動が思うようにできなくなりました。何か新しいことを始めるチャンスを探していました。

そんなとき、たまたまTwitterでキャリキャンの告知を見かけ、私はすぐに「入ろう!」と決めました。当時、自分の立ち上げた活動をする中で、「どうやったらこの活動の価値が認められ、広がるのか?」「もっと視野を広げて大きなことに挑戦できないか?」と感じていたので、そのモヤモヤを解決できる場になるかもしれない、という期待があったからです。

松原さんが学部時代に震災復興ボランティアで牡蠣養殖の手伝いをしたときの写真。この活動がきっかけで大学院では牡蠣についても勉強している=松原さん提供
次のページ
一人で抱え込んだ失敗から得た学び