コロナ下の制約、子どもは最小限に 成長に遊び不可欠
ボーネルンド社長 中西弘子さん

新型コロナウイルスの感染拡大は、心身の成長期にある次世代にも多くの制約をもたらした。とくに、仲間と自由に遊ぶ機会が減ったことを懸念しているのが、ボーネルンド(東京・渋谷)の中西弘子社長(75)だ。輸入玩具や屋内遊び場を通じ、遊ぶことの大切さを説き続けてきた中西さんに、親世代を含めて意識すべきことを聞いた。
「肥満した」「発散できず暴れる」
――コロナ禍は次世代にどんな影響をもたらしていますか。
「ちょうど1年前、小中高の一斉休校があったときに、これが続いたら絶対にダメだと感じました。体力低下など悪影響が出ることは予測できたんですね。実際に子どもが『肥満した』『思うように体が動かせなくなった』『発散できず暴れる』といった声が、お客さまや学校の先生から聞こえてくるようになりました。子どもの健全な成長には遊びが不可欠なんだと改めて感じています」
「(恒例行事や旅行など)体験の機会が失われていることも大きい。あれは楽しかったとか、忘れられないといった思い出は、それぞれの年齢でありますよね。(成長の節目を祝う)卒業式や入学式のように、それをやめたらいけないということも、いくつかあると思うんです。そのときしか得られない体験の記憶は、将来にわたって大事なものではないでしょうか」
――学校の課外活動などが制約されることについてはどう思われますか。
「あくまで個人的な意見ですが、少しやり過ぎだと思っています。取引先のある海外の状況を調べたり、専門家に問い合わせたりしていますが、子どもの重症化リスクが大きいとは言えません。むしろ体の成長や仲間づくりで遊びが一番大切なときに、それを規制してしまうリスクが気になります」
――コロナ下で売れたもの、売れにくくなったものというのはありますか。

「家のベランダやお風呂で水遊びができる水路や、あちこち組み替えができる小さなジャングルジムのような商品は、高い価格の商品なのに結構売れました。外での体験を家の中でもと、親御さんが考えてくれたのかなと思います。逆にかなり人気だった木琴の売れ行きが鈍りました。在宅されている近所に気をつかうこともあると思いますが、祖父母が孫のためにと買うケースが多かった商品なので、なかなか会う機会がないことが影響しているのかなと想像しています」
――コロナ下で屋内遊び場「キドキド」の運営は難しいのでは。
「人数制限や時間短縮、頻繁な除菌などで対応していますが(営業面では)厳しい状況です。ただ、社員の発案で(屋内外の遊び場で親子の遊びを促す)『プレイリーダー』の出張を始めたところ、保育園・幼稚園などにニーズがあることがわかりました。お客さまが来てくれるのを待っているだけではなく、こちらから外に出て行って、遊びのノウハウを継続的に提供していくことが必要だと気づきました。ちょっと遅かった感じもしますけど」
――親子一緒の時間が増え、育児ストレスを訴える声もあります。何かアドバイスはありますか。
「子どもが親にまとわりつく時代は7、8年で、それは親子にとってかけがえのない、ものすごく貴重な時間だと思うんですね。私は(2女の育児で)早く大きくなれ、早く自立してほしいと考えていましたが、今になって大反省しているわけです。もっと大事に過ごさなきゃいけなかったと」
「私は夫が猛烈サラリーマンで、午前2時ごろにお客さんを連れて帰ってくることが多く、そっちも結構たいへんでした。それで午後9時くらいに子どもたちが寝てから夫が帰るまでを自分の時間と決めて、趣味などに没頭しました。ストレスをためないようにしていたんだと思います」

――遊びや学習でデジタル機器の利用が広がっています。懸念はありませんか。
「コンピューターの発達は当然で、上手につきあっていかなければいけないものじゃないかと思います。自分の子ども時代はどうだったとか言っても仕方ない。5歳の孫はすでにスマホやタブレットに触れ、ユーチューブを見る生活をしているわけですね」
「かつて米国で目にして、日本人もまねしなければと思ったことがあります。2、3歳の子にもコンピューターを触らせるんですが、同時に知育玩具で遊ばせたり、休日に自然の中に連れ出して親子で楽しんだりしていたんですね。やはり大人が上手にバランスをとってやることが大事だと思います」
――少子化に悩む自治体が公園や屋内遊び場を整備する事例が増えています。遊び場に必要な条件とは何でしょうか。
「いろいろな遊びを体験できること、多世代が交流できること、そして一過性でなく、くり返しのめり込んで楽しめること。遊び道具も、それを手にした子どもがどんな喜びを感じ、何を学べるのか、そういうアイデアがデザインにちりばめられていることが重要だと思います」
「当社も行政と仕事をする機会がとても増えているんですが、その流れはコロナ下でも止まっていないんですね。自分たちの町や村を過ごしやすくするため、遊び場を変えようという動きは全国で起きています」
(聞き手 天野豊文 撮影 北山哲也)
1945年大阪府生まれ。65年帝塚山学院短期大学卒。夫・将之さん(現会長)が81年に設立したボーネルンドの経営に参画し、94年に社長就任。輸入玩具を中心としたショップ販売に続き、2004年から屋内遊び場「キドキド」を展開。全国の自治体の遊び場整備のほか、病院・店舗の子ども向けスペースの企画にも携わっている。11年の東日本大震災では原発事故のあった福島県で屋内施設づくりに協力した。
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