井上社長は「働き方の自由化と地域課題の解決は非常に相性がいい」という

どこでも働ける時代、行く意味が重要

白河 地域の人との関わりや魅力的なコミュニティーとの出会いで、自分の世界を広げられる価値を感じる人が多いのではないでしょうか。結果として、その機会を提供してくれる会社に対するロイヤルティーも上がるということですね。ワーケーションは、先ほどおっしゃっていた「いかに『過去の貯金』を越えられるか」という課題の答えにもなりそうです。一方で、ワーケーションの体験の質そのものを高める工夫も必要になると思います。例えば、地域の人との交流を促すための仕掛けについては、どう工夫をしているのでしょうか。

井上 はい。それぞれの拠点には、その地域で雇用した専任のコミュニティマネジャーを置いています。地元の人がハブになることが重要です。地元の人とコミュニケーションを重ねるうちに、その地域の課題についての理解も深まり、「自分にも何か貢献できることはないだろうか」「もしかしたら自分の事業の中でプロジェクト化できるかもしれないな」と発想につながることも少なくありません。実際、この半年だけでワーケーションがきっかけで法人設立した案件が3件も出ています。

白河 3件も。すごいペースですね。

井上 ワーケーションの価値を高める視点で、もう一つ。どこでも働ける時代だからこそ、「そこに行く意味」が重要になってきていると感じています。ハードだけでなくソフトの魅力の創出、それもビジネスとつながる魅力を積極的につくる姿勢が重要です。ワーケーションという言葉に込められる意味の中に、ワーク「+ロケーション」「+コミュニケーション」「+コクリエーション」といった要素も加えていく。「+バケーション」だけでは、企業としてはなかなか取り組みづらいのが現実ですので。

「ワーケーションで、何するの?」と聞かれて「ワカサギを釣りたいんです」と答えるのでは、「じゃあ、有休で行ってきてよ」と返されるかもしれませんが、「実はこういう社会課題に関心があるので、地域のキーパーソンに会ってきます」と言えたら、会社としても送り出す意味を見いだせるはずです。

白河 地方創生という社会全体の課題の解消にも貢献しそうです。

井上 おっしゃる通りです。少子化が進む日本では、1741ある自治体が移住人口を取り合っても仕方がない。人の流れを活性化して、関係人口・交流人口を増やしていくほうが理にかなっているはずです。自治体からもいい反応をいただいていますし、働き方の自由化と地域課題の解決は非常に相性がいいという感覚をつかんでいます。

コロナを機に「東京以外で暮らす」という選択肢を広げる人は増えていることも、これからの働き方の常識を変える追い風になると思います。LACは一般の利用も伸びていて、コロナ前と比べて5~6倍に。若い世代のほうが敏感に反応していて、全体利用者の8割が20~30代、特に女性が多いですね。IT(情報技術)企業が渋谷や六本木にオシャレなオフィスを構えたのは採用力を高めるためだと見ていますが、今後はむしろ「出社前提の働き方はしたくない」という価値観が広がっていくはずです。

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働き方の選択肢を用意しないと社員に選ばれない