シンプルに語る仕事の本質

「仕事ができる人の資質とは何か。一つ挙げるとすれば『頭の中をきちんと整理整頓できる』ことが大切だと私は思う」。多分に本人の語り口を意識した短文の積み重ねで、仕事に向き合う態度や心構えが語られていく。「陸軍のエリート参謀だっただけあって、瀬島さんはものごとを複雑にとらえるのではなく、非常にシンプルにポイントを絞ってとらえる。しかも三つに絞り込むという特徴があったように思う」。自身も関わった安宅産業と伊藤忠商事の合併交渉の場面なども簡潔に織り込みながら仕事のできる人の思考や手法を的確に伝えていく。

体験的仕事論なだけに、西川氏の生きた高度成長期からバブル期、そしてゼロ年代初頭までの体験や、そこから体得した仕事術、仕事観が語られる。デジタルトランスフォーメーション(DX)もインターネットも出てこない。それでも古びた感じがしないのは、テクニカルな要素は変わっても仕事の本質はそう変わるものではないということか。身近なところにいつも置いておいて、折に触れてシンプルな言葉に勇気づけてもらいたい。そんな気にさせる本だ。

新書1位は『スマホ脳』

それでは、先週のランキングを見ていこう。今回は新書のベスト5を紹介する。

(1)スマホ脳アンデシュ・ハンセン著(新潮新書)
(2)仕事と人生西川善文著(講談社現代新書)
(3)人新世の「資本論」斎藤幸平著(集英社新書)
(4)歴史探偵 忘れ残りの記半藤一利著(文春新書)
(5)在宅ひとり死のススメ上野千鶴子著(文春新書)

(三省堂書店有楽町店、2021年3月15~21日)

1位は、デジタル機器が私たちに与える影響をスウェーデン出身の精神科医が解説した話題の翻訳書。NIKKEI STYLE ブックでも「スマホは脳を弱くする 連続クリックで衰える集中力」の記事で紹介した。今回取り上げた西川氏の本は週末に一気に駆け上がり、2位に入った。3位は、気候変動問題の解決策をマルクスの新解釈を提示しながら論じた20年9月刊の新書。息の長い売れ筋だ。4位は、この1月に死去した半藤一利氏の雑文集。歴史のよもやま話から自伝的エッセーまで収める。5位は、上野千鶴子氏のおひとりさまの老後シリーズの最新刊。慣れ親しんだ自宅で、自分らしい幸せな最期を迎える方法を説いている。

(水柿武志)

仕事と人生 (講談社現代新書)

著者 : 西川 善文
出版 : 講談社
価格 : 990 円(税込み)

ビジネス書などの書評を紹介