夫は転勤、子どもも上京 愛犬が喪失感埋めてくれた

日経ARIA

志田周子さんと、アリスちゃん
志田周子さんと、アリスちゃん
日経ARIA

かけがえのない家族の一員として、動物との暮らしを楽しんでいる女性は多いはず。物言わぬ彼らですが、時に心を幸せな気持ちで満たし、時に沈む気持ちにそっと寄り添ってくれます。「この子のためなら何でもする!」とまで思わせる存在かもしれません。人生に豊かな彩りを運んでくる最愛のパートナーとの物語を紹介します。

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「アリス、今日は女優魂、すごいね!」。カメラを向けるとぴたっとポーズを決める愛犬に、志田周子(のりこ)さんは驚きの声をあげます。「確かに、今日は機嫌がいいよね」と、隣で応じるのは、夫の文毅(ふみたか)さん。アリスちゃんは推定11歳のミニチュアシュナウザー。高齢のため膵臓(すいぞう)と心臓が悪く、毎日の服薬と月に1回、病院での血液検査が欠かせません。それだけに、元気な姿を見せてくれるのが家族としては何よりうれしい。そんな二人の思いが伝わってきます。

北海道からフェリーに乗って東京へお引っ越し

都内で夫と大学3年生の長男、2年生の次男と暮らしている志田さん。結婚以来、子育て中心の生活をしてきましたが、息子たちの手が離れ、本格的な仕事再開に向けて昨年の春から大学のリカレント教育課程を受講しています。ところが、コロナ禍で授業はすべてオンラインに変更、同級生にも一度も会えていません。「でも、これからは仕事もリモートでやりとりする場面が増えていくだろうから、オンライン授業はZoomに慣れるいい機会になりました。あと、昨年春ごろアリスが一時ほとんど食べなくなってしまったりしたので、家で一緒にいられるのも結果的にはよかったです。ただ、どんどん甘えん坊になってしまいましたが……」

アリスちゃんと志田さんは2019年の秋、北海道からフェリーに乗って、はるばる東京までやってきました。というのも、志田さんは単身赴任の夫と離れ、息子たちと長く札幌で暮らしていたのです。息子が二人とも東京の大学に通うようになったのを機に札幌の住まいを手放し、東京で久しぶりに家族全員がそろう新生活が始まりました。

女優ポーズ、決まってます!

初対面からうれしそうに「だっこして」

国家公務員の文毅さんは全国転勤があり、そのたびに住まいを移していた志田さんたち家族が札幌に引っ越したのは2008年。11年に文毅さんは東京へ転勤することになりますが、「当時は長男が中学に入学したばかり。子どもたちの希望も尊重して、2歳下の次男が高校を卒業するまで私たち3人は札幌に残ることを決めました」。

それまではずっと公務員宿舎暮らしでしたが、当面札幌に腰を落ち着けることを決めたので、初めて中古のマンションを購入。志田さんにとって念願だった、犬を飼うことができるペット可の物件でした。「飼うなら保護犬をというのは前から考えていました。この年は東日本大震災があったので、最初は飼い主と離れ離れになってしまった犬を引き取ろうかなと思っていたんです」と志田さん。しかし保護団体のホームページを見ていて目に留まったのが、道内で保護された推定2歳のアリスちゃんでした。

「私は犬種とかに全然詳しくなくて、単純にマンションの規約にも合う大きさの子だし、いいかも? と思って会いに行きました。そうしたら、初対面からアリスはうれしそうにぴょんぴょん跳ねて『だっこして、だっこして』と私のところに寄って来たんです。保護犬でそういうことってあんまりないらしくて、保護団体の方も『あら、珍しいわね』って驚いていました」

出会って早々、アリスちゃんに心をつかまれてしまった志田さんでしたが、そのときはまだマンションの本契約が済んでいなかったため、一旦は帰ることに。「その日から毎日、ケータイで撮影したアリスの写真を見ては『待っててね』って話しかけていました」

大きな耳と長いまつげがチャームポイント。アリスという名前は、ディズニー好きの長男が「ふしぎの国のアリス」にちなんで付けたそうです
夫の文毅さんがアリスちゃんと一緒に暮らすようになったのは1年前から。「今もだんだん仲良くなっている途中です」と文毅さん
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次男のサッカー観戦で一緒に道内を旅する日々