腎臓が悪いと認知機能も下がる 若いうちからケアを

日経Gooday

腎機能が下がってきたら、認知機能にも悪影響が?(C)RAJESH RAJENDRAN NAIR-123RF
腎機能が下がってきたら、認知機能にも悪影響が?(C)RAJESH RAJENDRAN NAIR-123RF
日経Gooday(グッデイ)

若年成人期から中年期にかけて腎臓の機能が低下した人は、その後、認知機能が低下するリスクが高いことを示唆する研究結果が報告されました。

末期腎不全には至らない腎機能低下も、認知機能を下げる?

人工透析や腎移植が必要になる末期腎不全患者には、認知機能の低下が多く認められ、末期腎不全患者の認知機能低下リスクは、同年代の人々に比べ約3倍になるといわれています。近年、末期腎不全まで進行していないレベルの腎機能の低下もまた、脳には有害であり、認知機能の低下を招く可能性があることが明らかになってきました。

一般に、加齢とともに腎機能は低下しますが、その速度は人によって異なります。また、年齢が若いうちからの腎機能の低下が、その後の認知機能に及ぼす影響は、これまで、明らかではありませんでした。

今回、米Northwestern大学などの研究者たちは、若いうちに腎機能が低下すると、認知機能の低下も早まるのではないかと考えて、26歳から44歳までの成人を20年間(登録からは30年間)追跡し、腎機能と認知機能の関係を検討しました。

対象にしたのは、心血管疾患のリスクと発症について検討するための観察研究「CARDIAスタディ」に参加した、米国の18~30歳の男女です。これらの人々は、1985年から1986年に米国で登録され、最長30年追跡されていました。

参加者は登録から10年目の受診時点から5年ごとに、腎機能の指標である血清クレアチニン値と、尿たんぱく量の指標である尿中アルブミン/クレアチニン比(ACR)の測定を受けていました。研究者たちは、血清クレアチニン値を利用して、老廃物を尿に排出する腎臓の能力を示す、推算糸球体ろ過量(eGFR)を算出しました。

さらに30年後の時点で、参加者は、幅広い認知機能の評価(実行能力を調べるStroop Test、言語記憶を評価するレイ聴覚性言語学習検査〔RAVLT〕、思考、反応、動作などの精神運動速度を調べるDSST〔Digit Symbol Substitution Test〕、軽度認知障害を検出するためのMoCA〔Montreal Cognitive Assessment〕、文字流暢性検査、カテゴリー流暢性検査)を行いました。研究者たちは、それぞれの検査のスコアを求めるとともに、それらを総合したスコアも算出しました。

腎機能の低下を経験していた人の認知機能低下リスクは高い

今回の分析には、条件を満たした2604人(26~44歳、平均年齢35歳、54%が女性、45%が黒人)のデータを用いました。国際腎臓病ガイドライン機構のKDIGO(Kidney Disease: Improving Global Outcomes)ガイドラインに基づき、これらの人々を「腎機能が維持されており、末期腎不全になるリスクは低い集団」、「腎機能がやや低下していて、末期腎不全になるリスクが中程度の集団」、「腎機能が低下し、末期腎不全リスクが高まっている集団」、「腎機能が大きく低下し、末期腎不全リスクが非常に高くなっている集団」の4つに分類しました(図1)。

図1 KDIGOガイドラインに基づく末期腎不全リスクのレベル

登録から10年後の時点では、末期腎不全低リスクの人が2508人(96.3%)、リスクが中程度だった人が89人(3.4%)、高リスクの人が7人(0.2%)で、リスクが非常に高いと見なされた人はいませんでした。登録から30年後には、低リスクが2347人(90.1%)、中程度は196人(7.5%)、高リスクは37人(1.4%)で、24人(0.9%)は末期腎不全リスクが非常に高いと見なされました。

20年間に行われた複数回の腎機能評価の結果から、2604人を、(1)一貫して低リスクのグループ(2177人)、(2)末期腎不全リスクが中程度以上と見なされた測定回が1回あったグループ(240人)、(3)末期腎不全リスクが中程度以上と見なされた測定回が2回以上あったグループ(187人)に分類しました。

年齢、性別、人種、学歴、BMI、総コレステロール値、喫煙習慣、高血圧、糖尿病などの要因を考慮して分析したところ、腎機能の低下を経験していた人の認知機能低下のリスクは、そうではない人に比べ高いことが明らかになりました。「末期腎不全リスクが中程度以上の腎機能低下が認められた回数が多いこと」と、認知機能の低下(実行機能、精神運動速度、複合認知機能など)の間には有意な関係が見られました。

さらに著者らは、腎機能の長期的な変化の傾向に応じて、参加者を(1)腎機能は終始安定(全ての受診時に低リスク集団に分類された)、(2)腎機能はいったん低下したがその後に改善(末期腎不全リスクが中程度以上と見なされた測定回が1回以上あったがその後回復)、(3)腎機能が持続的に低下、の3集団に分類して検討しました。その結果、(1)の腎機能が安定していた患者、および、(2)のいったん悪化した後に改善した人と比べ、(3)の腎機能が低下した状態が続いていた人では、認知機能(DSSTとMoCAのスコアと、複合認知機能)が有意に低下していました。

今回得られた結果は、若いうちから腎機能に目を向け、低下を防ぐことによって、その後の認知機能の低下を回避できる可能性を示すものといえます。

論文は、2020年9月2日付のNeurology誌電子版に掲載されています[注1]

[注1]Sedaghat S, et al. Neurology. 2020 Oct 27;95(17):e2389-e2397. Epub 2020 Sep 2.

[日経Gooday2021年1月20日付記事を再構成]

大西淳子
医学ジャーナリスト。筑波大学(第二学群・生物学類・医生物学専攻)卒、同大学大学院博士課程(生物科学研究科・生物物理化学専攻)修了。理学博士。公益財団法人エイズ予防財団のリサーチ・レジデントを経てフリーライター、現在に至る。研究者や医療従事者向けの専門的な記事から、科学や健康に関する一般向けの読み物まで、幅広く執筆。

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