例えば、パンツはバギーパンツと呼ばれてパンタロンよりもさらに裾幅が太(ぶ)っとい。普通ならばこれにハイヒールのブーツを合わせるのだが、木暮修は英国風にコンビのシューズをよく履いていた。バギースーツに合わせるシャツは、ベージュや白のオープンカラーシャツ。衿(えり)をピークドラペルのダブルのジャケットから出して胸元から白いTシャツをのぞかせる、ちょっとバンカラ風な着こなしが木暮修流のバギースーツスタイルである。

また、ドラマの中でよくBIGIのバギーパンツに合わせていたのが古着の革ジャンだ。いわゆるG-1タイプのフライトジャケットである。筆者などはこのショーケンの革ジャンの着こなしに一番グッときちゃったクチだ。ヨーロピアンスタイルにビンテージウエアをさらりと合わせちゃうなんて、今さらながら格好いいぞ、小暮修。

映画「雨のアムステルダム」撮影帰国会見。(左から)蔵原惟繕監督、三国連太郎、岸恵子、萩原健一(1975年)=共同

トレンチコートの着こなしも自由でおしゃれだった。ジャン・ギャバンやアロン・ドロンも、小暮修のようにあれほどスーツにノータイでカジュアルには着こなせないだろう。

「前略おふくろ様」のサブちゃん巻き

マカロニ刑事、木暮修に次ぐショーケンが演じた俺たちのファッションアイコンが、これまたご存じ、「前略おふくろ様」のサブちゃんこと片島三郎だ。

長髪をバッサリと角刈りにして駆け出しの板前役として登場したショーケンにビックリしたのは最初だけで、みんなシャイで不器用なサブちゃんの「あいやぁ……」という口調を物まねしたものである。ドラマの中でショーケンが無地のマフラーを二つ折りにして首に巻いていて、これもピッティ巻きならぬ「サブちゃん巻き」と言ってみんながまねした。

ちょうどこの頃、「メンズクラブ」にアイビーファッションのページとは別に菊池武夫氏がスタイリングしていたBIGIのページがあって、そこでショーケンは盟友だったザ・テンプターズ出身の故・大口広司と一緒にモデルとして毎号出ていた。

映画「八つ墓村」製作発表で渥美清(左)と写真に納まる萩原健一(1976年)=共同

今でも憶えているスタイリングが、BIGIのピーコートにバギーパンツでナイキ風のスニーカーをはいてくわえタバコ。それはもう格好よかった。筆者的にはこの時代のショーケンの格好が一番好きである。ちなみに大口広司氏も「前略おふくろ様」をはじめショーケンのドラマによく出演していて、BIGIのデザイナーとして多くのブランドも手掛けていた。

数年前に、この頃のショーケンの格好のことを取材で菊池武夫氏にお会いした時に話したら、タケ先生は「よく憶えているね」と半ばあきれ顔で喜んでくれました。

筆者が勝手に「ショーケンコンサバ時代」と命名しているのが、「課長サンの厄年」に出演していた頃のショーケンのファッションである。サントリーのモルツのCMで「うまいんだなぁ、これが!」と言っていたのもこの頃だ。きちんとタイドアップしたコンサバなスーツスタイルで「MEN'S EX」の創刊号の表紙も飾っている。

実は「ショーケンコンサバ時代」のスーツがどこのブランドのものなのか、ずっとわからなかった。おそらくは菊池武夫氏の教え子で元「イン&ヤン」のデザイナーだった、後年のショーケンのドラマや映画で衣装のスタイリングをしていた村岡勝重氏のビスポークラインじゃないかと思っていたのだが、どうもそうではないらしい。

スーツの着方も時代によってさまざまだった。記者会見で笑顔を見せる(1996年)=共同

ショーケンに詳しいスタイリストの青柳光則氏に聞いたところ、あの頃にショーケンが着ていたスーツは、「ブレイズ・オブ・サビルロウ」か「ブルーロンド」というブランドのものではないかということだ。どちらも、やはりBIGI出身で菊池武夫氏の教え子であるデザイナーの吉田十紀人氏がブランドの立ち上げに関わっている。

こうしてみると、ショーケンのスタイルには、いつもタケ先生が何らかしらのかたちでずっと関わっていたのだなぁ。

ショーケンの訃報がニュースで流れた2019年の3月28日の深夜、菊池武夫氏はご自身のFBで真っ先に「ショーケンが逝ってしまった。寂しい。ご冥福をお祈りいたします」というコメントと、BIGIの服を着ているショーケンの写真をたて続けにアップした。当時、筆者には何よりもこれが一番堪(こた)えました。一番泣けました。ショーケンは今でもずっと、俺たちのファッションアイコンなのだ。祭りのあとにさすらいの日々を。

いで あつし
1961年静岡生まれ。コピーライターとしてパルコ、西武などの広告を手掛ける。雑誌「ポパイ」にエディターとして参加。大のアメカジ通として知られライター、コラムニストとしてメンズファッション誌、TV誌、新聞などで執筆。「ビギン」、「MEN’S EX」、JR東海道新幹線グリーン車内誌「ひととき」で連載コラムを持つ。

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