教育資金はつみたてNISAで投資も 魅力薄い学資保険
子どもの教育費は、どのようにためるといいか。そんな質問を、よくいただきます。私が子どものころですから、今から40年ほど前になるでしょうか。そのころでしたら「学資保険」で教育費を積み立てるというご家庭が多かったものです。
昔は返戻率が高い学資保険もありましたが、今はそうではありません。掛け金の一部が保障に充てられるものも多く、「ためる」という目的で利用するには魅力が薄くなってしまいました。だからダメだ、というのではなく、要望によるというところです。保険ですから、貯蓄性だけではなく、保障(親が亡くなってしまったらなど)もほしいという人には、絶対的に否定するものではありません。ただ、一般に学資保険に何を求めるのかと聞くと、保障ではなく、貯蓄性を求める人が圧倒的に多いもの。となると、貯蓄性がよろしくない学資保険には、魅力がないという判断をするわけです。
そういったところを理解している人は、教育費をためるための軸として2つの視点を持っています。「安全性」と「成長性」です。安定性とは預貯金で、成長性のために講じるのは投資となります。もちろん、どちらにも一長一短はあります。預貯金は減らないので安心ですが、長い目で捉えるとインフレのリスクや、いわゆる「リスク(不確実性)を取らないリスク」も伴います。投資のほうは、リスクを取っても増えないかもしれないという不安があります。
教育費を投資で作るのはアリか
教育費は「聖域」ともいえるものです。お金をかけるか、かけないか、どこまで進学させるかなど、ご家庭の考え方次第。ですから資金作りに投資を使うかどうかもご家庭次第なのですが、全額を投資で準備するのは不安だという意見が多数です。
投資の場合、お金を引き出そうとするタイミングで相場が下がり、損失を被る可能性があります。極端なことを言えば、そうしたリスクには絶対に耐えられないと思うなら、投資をすべきではないでしょう。しかし、投資をせずに預貯金だけでためようとしても、十分な金額が用意できないということもあるかもしれません。そのような時であっても、対応の仕方はあるわけですが、それは分からない、自信がないということもあるでしょう。
また、短期に必要になる資金ならば、投資の恩恵を受けることができないまま、引き出すことになる可能性も十分にあります。
教育費作りに投資を用いるのなら、折衷案となりますが、預貯金と併用していくのがよいのではないかと思います。もちろん各ご家庭の状況や、投資に対する自信などによって異なることではありますが、安全性と成長性、預貯金と投資の良さを取り入れるのです。
また、教育費には、数年後程度の近い将来に使うものと、15年、18年後など少し先になる資金の2つに分けて考えるようにしましょう。いつ必要なお金をためたいのかを意識するということです。必要になる時期によっても、貯金だけでためるべきか、投資を併用すべきかが変わってきます。
兼用する場合は、ジュニアNISA(少額投資非課税制度)、つみたてNISAなど、非課税で投資できるものもあります。どれを使うべきなのか迷う人も多いようです。
近い将来に必要になる教育費は、預貯金で準備します。つまり、中学生の子どもが3~5年後に必要になる大学進学資金や、小学校低学年の子どもの中学受験の費用などです。一方、乳幼児のときに、高校や大学進学など15年以上先に必要になる資金を準備するには、投資が有効です。つまり、貯金だけでは間に合わない部分を、時間を味方にした長期投資で、失敗の確度を抑えて資金を作るというイメージです。
何に投資すべきか
教育費を作るには、どのような投資をするとよいのでしょうか。投資に良いも悪いもないのですが、一般的に考えると短期でリスクを取りながらトレードする「外国為替証拠金取引(FX)」や「差金決済取引(CFD)」、「個別株」などにいの一番に取り掛かるのは避けるべきでしょう。特に初心者の方には。やるならば、投資信託を使って長期視点で資産形成を狙うべきでしょう。それをどこでやるのか問題。その候補の一つとして「つみたてNISA」が挙げられます。
つみたてNISAは1月1日から12月31日までの1年間、40万円を上限に投資ができます。そして、その1年分の投資は非課税で20年間置いておくことが可能。途中で売却して現金化することもできます。1年間40万円の投資を毎年続けると、始めの1年分が非課税期間満了を迎える年には、最大で800万円の元本を投資できます。
積み立てできる商品は金融庁が定めるリスクの少ない投資信託が主で、初心者でも貯金の延長と考えて取り組みやすいのが特徴です。もちろんリスクはありますが、長期保有することで利息に利息が付く「複利」の効果が得られ、時間がたてばたつほどお金を増やしやすくなります。
教育費の相談の中では、「ジュニアNISA」を利用したい、という話も伺います。ジュニアNISAは子ども名義の証券口座で、1年間に80万円までの投資ができます。つみたてNISAより多くの金額を投資できる一方、非課税期間が最長で5年間、子どもが18歳になるまで引き出すことができないといった制限があります。
また、ジュニアNISAは2023年で終了します。終了後は新たな資金を投資することはできませんが、20歳になるまで非課税で保有することができ、払い出しの年齢制限がなくなるので、自由な時に引き出すことができるようになります。とはいえ、今からでは投資可能な期間が短く、あまりおすすめはできません。終了時までの3年間で最大240万円を投資して少しでも利益を出したいとか、3年未満の短期トレードで非課税枠をいかしたいという要望がある人にはよいのかもしれませんが、そもそもそうした投資は不確実ですし、余裕資金が十分にあるということでなければ使用しなくてもよいでしょう。
ためるのは教育費だけではない
ここまで教育費についての話をしてきましたが、ためるのは教育費だけではありませんよね。
入り口の考え方として、教育費だけをみるのではなく、自分の老後など長期視点をもちながら教育費もと考える方が、効率よく成功だったといえる資産形成につながると思うのです。つまりは家庭の収支を改善させ、貯蓄を増やしていくという目的から入るわけです。
ですから、まずは生活防衛資金をためておくこと。この1年、新型コロナウイルスによって経済が大きな打撃をうけ、予期しない事態が起きても生活を維持できるような蓄えを持っておく必要を感じた人も多かったことでしょう。不測の事態に遭っても生活を維持できる蓄えを確保し、教育費は別に持つことが大切です。
また、老後資金も併せて計画的にためること。教育費と老後資金は綱引きの関係にあります。教育費だけにお金をつぎ込むと、老後、破綻してしまうこともありえます。
教育費をためるには、貯金が安心ですが、投資の併用も可能なのです。極端にどちらか?と0か100かで考えるのではなく、自分の場合は、こういったバランスで作っていこうというところを見いだしていただければと思います。
家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー代表。お金の使い方そのものを改善する独自の家計再生プログラムで、家計の確実な再生をめざし、これまでの相談件数は2万3000件を突破。著書に『はじめての人のための3000円投資生活』『年収200万円からの貯金生活宣言』など。オンラインサロン「横山光昭のFPコンサル研究所」を主宰。
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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