一般的に、欧米型(職務型)の報酬は外部の労働市場との見合いで決まります。「今このポジションを担える人材を外部から採用する場合どのくらいの報酬水準が妥当か」の見立てが賃金を決める重要な要素になります。一方、日本企業で多く採用されている職能型の報酬は企業内の特殊能力を重視して賃金を決めます。採用した新卒人材に企業が投資し、教育して育てるので若年のうちは給与が低く抑えられます。そして社内で仕事の進め方や人づき合いといった経験を重ねる中で、企業特有の職務を円滑に遂行する能力を身に付け、その対価として報酬が高くなります。

このため、日本企業で働く従業員のキャリアは社内に閉じたものになりやすく、自分のキャリアを高めるために自己投資を行う従業員は欧米ほど多くありません。

社内で「こまった中高年人材」とならないよう(写真はイメージ=PIXTA)

欧米企業では市場価値が自分のキャリア(賃金)に直結するため、市場価値を高めるための自己投資は個人の判断と責任のもとに行われます。自己投資によって付加価値を身につけた個人を、企業が買う(雇う)ことになります。

重要なのは、転職でキャリアアップを考えている読者の皆さんの価値基準は「社内で培った特殊能力」以上に、「外部の市場価値」で測られるということです。

この点を理解せずに安易に目先の報酬だけで転職してしまうと、(転職前の会社で得た特殊能力が転職先では通用しないために)期待されたポジションで役割を遂行できず、転職者と採用企業ともに不幸な結果になります。年収アップといった報酬の軸だけで判断せず、自分が転職先でどう貢献できるかイメージを確立することの方が、これから充実した職業人生のキャリアを積む意味では重要になります。

市場が求める価値の高いスキルを理解した上で、自分のキャリアは自分自身で高める意識を持ちながら職業経験を積むことが大切です。

中高年人材の不活性と若者の働きがいの喪失

日本企業はこれまで、社内に適応できるゼネラリストを育成するキャリア形成を志向してきました。マネジメントやリーダーシップといった教育に力を入れてきた根底には、社内の特殊能力獲得の期待も含まれています。しかし、今後は成果を創出できる知見・経験を備えた人材を求める傾向が強まるので、自ら課題とゴールを設定し、自走し成果を出せる専門力を身に付けることが求められるようになります。また、これまでの仕事で培ってきた豊富な経験や知識、高度な技術・技能・センスを生かし、社会や組織に貢献することも重要となります。

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定年雇用制度と年功型賃金の見直しが不可欠
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