日経ナショナル ジオグラフィック社

2021/3/29

汚染も問題だ。毎年、何トンも太平洋に流出するプラスチックのとがった破片は、鳥の腸に穴を開けて死に追いやることがある。

ただ、アホウドリには他の海鳥よりも生物学的に有利な点がある。イカを多く食べる彼らは、フリント氏が「自然のプラスチック」と呼ぶキチン質でできたイカのくちばし(顎板)や、あるいはプラスチックの破片を塊にして吐き出すことができる。

とは言え、国際自然保護連合(IUCN)が近危急種(near threatened)に指定しているレイサンアホウドリに、プラスチックがどのような影響を与えるかはまだ不明だと専門家は言う。

また、北太平洋の温暖化や酸性化は、イカを始めアホウドリの餌となる生物の数にも影響を与える可能性がある。フリント氏によると、イカが減ったり、生息域が変わったりする可能性があり、それが鳥たちの食料事情にも影響を与えかねない。

アリューシャン列島より北でも

レイサンアホウドリにとっての脅威を減らし、長期的に保護していくためには、彼らの生態や行動についてより多くのデータが必要だ。

陸上にいる時のレイサンアホウドリは研究しやすい。体が大きく、地上に巣を作り、隠れないからだ。しかし、研究者の目が届かない海の上こそが、彼らにとって一番の居場所だ。

そこで最新の技術が登場する。現在では、アホウドリの羽の裏側や足環に様々な衛星タグが取り付けられ、彼らがどこを飛んでいるかについて詳しいデータが集まってきている。

このようなタグによって、繁殖中のレイサンアホウドリが時にはアラスカのアリューシャン諸島よりも北まで行って採餌していることが明らかになったと、米海洋大気局のアラスカ水産科学センターで海鳥を研究する海洋生態学者のロブ・スリヤン氏は言う。

「ウィズダムが海鳥保護のロールモデルになっているのは、ひなのためにどれほど遠くまで飛んで餌を採っているかがわかってきたからです」

タグの中には羽ばたきや飛行速度、飛行時間などの飛行力学的なデータが得られる加速度計が含まれているものもある。スリヤン氏によると、こうしたデータから、彼らがどのようにして効率的に長く海の上を飛べるのかなどが明らかになってきた。

それ以外にも巣立ったひなについて、例えば両親と同じコロニーに戻ってくるのか、など大きな疑問がまだある、とスリヤン氏は言う。

ウィズダムが与える希望

アホウドリの虜(とりこ)になったのはスリヤン氏だけではない。世界190カ国以上の人々が、2014年から2018年までカウアイ島に設置されていた米コーネル大学鳥類学研究所の「アルバトロス(アホウドリ)・カメラ」を見ていた。

「ウィズダムは自然界での可能性について、私たちの想像の限界を超えさせてくれます。発見されるべきことはまだまだたくさんあります」と、同コーネル研究所の鳥類カメラのプロジェクトリーダー、チャールズ・エルダーマイヤー氏は言う。「そして、そのことが私たちにさらなる希望を与えてくれます」

国際的に有名なウィズダムには、彼女専用のウェブカメラがあるべきかもしれない。残念ながら、プリスナー氏によると、ミッドウェーのインターネットは恐ろしく遅い。次善の策は、動きに反応するカメラで15分ごとくらいに静止画や短い動画を撮ることだ。

「その件は何度も話題に上がっているんです」とプリスナー氏は言う。「来年には話をしていくことになると思います」。ウィズダムに長生きしてもらいたい理由がさらに増えた。

(文 KIM STEUTERMANN ROGERS、訳 桜木敬子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2021年3月1日付]

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