2021/3/19

東大の女子学生は「第二東大生」扱い

―― 中野さんご自身も、「東大卒の女性」というステレオタイプ・スレットにさらされてきたわけですよね。

中野 東大に行くと結婚できないんじゃない?などと親世代や祖父母世代の人からはかなりの頻度で無意識の脅しがありましたし、「女の子『なのに』数学ができるんだね」と謎の褒められ方をしました。そうした中で、徐々に「理系」であることと「女」であることは両立しないものだという、根拠は浅いけれども根の深い通念が刷り込まれていくのです。

当時は、実際に東大女子の数は少なく、94年入学の私の代で16%程度。工学部に進学すると応用化学科は女性が10%でした。そして女子の場合、東大に入った時点で「第二東大生」とでもいうような扱いでした。女性としては二流、東大生としても二流みたいな感じがありましたね。

脳の男女差は「飲み屋の話題」

―― 男性脳、女性脳とよく聞きますが、リーダーシップという点で、男女の性差による能力の違いは、やはりあるのでしょうか。

中野 男性脳、女性脳というのは「飲み屋の話題」程度の話です。実際は個人差の方が大きいという見解が主流ですし、意味があります。

例えば身長には性差がありますが、それは単なる統計上の違い(有意差)であり、男性なら全員が女性より背が高いかというとそうではありません。男性でも150cmの人はいるし女性でも180cmの人はいます。実生活に統計上の理屈を持ち込んでああだこうだというのは、飲み屋の話題程度なら面白いですが、現場では、その人の属性よりも個人の能力を見るべきです。それがフェアな態度であるし、実際に組織運営をするうえでもその方がよりスムーズですよね。

頭を働かせたくないから「ラベル」を貼る

―― 現実には、女性だから気が利くとか、男性だから意思決定力があるとかいった、属性で判断しがちですし、されがちです。

中野 その現象を、私はある意味面白いと思ってしまうのですが、人間の脳は、相手を属性で判断せざるを得ないぐらい情報処理の不得手な、割とだめな脳なのですね。本当なら、個人の情報を丸ごと受け取って判断するのが一番正確でいいのですが、それができないので、この属性の人はこういうタイプの人間に違いないと粗く処理してあとで辻つまを合わせようとする。

「女性だから」「子どもがいないから」「体育会系出身だから」などさまざまな情報ラベリングであらかじめ整理して分類しておき、そこに当てはめる。するとすごく計算が軽く済み、だめな脳でもこれくらいの処理ならできる。あの人はこうに違いないとまずラベルを貼って処理しようとするのは、頭を働かせなくても判断過程をショートカットしたい、ちょっと残念な脳の性質なんです。

こうしてラベリングをすると必ず見落としてしまう情報があります。とはいえ、正確な処理はなかなか迅速にはいかないので、普段から行うには現実的ではない。ですので、相手に対する自分の判断が間違っていた、と気づいたときに、いち早く修正できるようにしておくのが大事ですね。

新しい情報を得たら修正できる能力をそれぞれが身に付けておくべきなのだと思いますし、「あなたは女だからどうこう」と言っている人がいたら、ああ、この人の脳は手抜きをしているんだなと思ったらいいですよね。

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属性でなく個人で見られる組織は強い