トヨタの燃料電池車「ミライ」 静かさUPで軽快な旋回

2021/3/28
今回の試乗では高速道路やワインディングロードなど、合わせて435.1kmを走行。燃費は満タン法で71.1km/kgを記録した(写真:花村英典、以下同)
今回の試乗では高速道路やワインディングロードなど、合わせて435.1kmを走行。燃費は満タン法で71.1km/kgを記録した(写真:花村英典、以下同)
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フルモデルチェンジでがらりと見た目の変わったトヨタの燃料電池車「ミライ」。大型FR車用のプラットホームを用いたパッケージングや走り、そして一新された内外装デザインなど、純粋に“魅力あるクルマ”を目指したというが、果たしてその進化やいかに。

後輪駆動に変身

新型ミライは先代と比較して、全長で85mm、全幅で70mm拡大した。ただ、全高は逆に65mm低く、140mm長くなったホイールベースから想像できるように、オーバーハングは短縮された。つまり、細部の意匠の個人的好き嫌いを別にすれば、新型ミライのプロポーションは以前より明らかにカッコよくなった。そこには「クルマとしての純粋な商品力を上げて、燃料電池車(FCV)をもっと普及させたい」という開発陣の切実な思いがある。

というのも、経済産業省や関係企業が参加する水素・燃料電池戦略協議会が2017年に「2020年度までに国内でFCVが4万台、水素ステーションが160カ所」という普及ロードマップを策定したにもかかわらず、国内で一般入手可能なFCVは、つい最近までミライしか存在せず(「ホンダ・クラリティ フューエルセル」は2020年末にやっと一般リースがはじまったばかり)、その国内登録台数も約3500台にすぎないからだ。対して、2020年12月時点で運用されている水素ステーションは全国137カ所。少なくとも同ロードマップに対して、クルマ側の普及が遅れているのは明白だ。

「普及させたいというなら、もう少しコンパクトで手ごろなクルマがいいのでは?」との声もあるが、現時点ではFCVの“燃料”である水素を貯蔵する高圧タンクは円筒形でなければならず、しかもFCVの優位性を表現するためには、普通の電気自動車(EV)より長い航続距離は半ば必須条件といえる。実際、新型ミライはそのために、3本で141リッター分の水素タンクを積んでおり、「小さなクルマでは成立しにくい」のがFCVの現状でもある。

……といったFCV特有のパッケージ要件を満たすために、新型ミライが選んだのが大型FR想定の「GA-L」プラットホームだ。車体後半に2本の水素タンクを横置きした先代に対して、新型では、通常は変速機やプロペラシャフトが収まるセンタートンネル部分に縦置きタンクを追加した。さらに新型は後軸付近にモーターを積む後輪駆動でもある。

現行型「レクサスLS」にも採用されている「GA-L」プラットホームを用いて設計された新型「ミライ」。2020年12月9日に販売を開始した
「ミライ」のボディーサイズは全長×全幅×全高=4975×1885×1470mm、ホイールベースは2920mm。車重は1930kgと発表されている

高級Dセグメント級の質感

伸びやかなロングノーズに、リアウインドーまで緩やかな弧を描くファストバックスタイルに加えて、大径タイヤも新型ミライのカッコよさ(と走行性能)のキモのひとつになっているのは間違いない。ただ、これは単なる見た目のためだけでなく、FCVならではの事情もある。高圧水素タンクは安全性のために、キャビン外に搭載しなければならないことになっている。物理的にはルーフ上という選択肢もある(実際、燃料電池バスは天井タンク)が、乗用FCVでは現実的に円筒形タンクを床下に積むしかない。大径タイヤはその地上高を稼ぐためにも都合がいいのだ。

今回の試乗車には、オプションとなるブラックスパッタリング塗装・ブラックナット付き20インチホイールと、245/45ZR20サイズの「ファルケン・アゼニスFK510」タイヤが装着されていた
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