今は預貯金ではお金が増えない時代なので、お金を増やそうと思ったら、預貯金以外の金融商品を利用することになります。中には「お金は増やしたい、でも値下がりして損するのはイヤ」と思う人もいるようですが、「減らさない」と「増やす」を両立させることはできません。この2つは別々に考える必要があります。
「リスク限定」や「元本確保」ならば安心?
つみたてNISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)といった制度ができたことによって、積立投資を始める人が増えています。とはいっても、預貯金しか利用していない人はまだまだ多いのが実情。預貯金でお金が増えないことには不満を感じていて「少しでもお金を増やしたい」と思いつつも「値下がりするのが怖い」とか「損をしたくない」といった理由から投資に踏み出せないでいるようです。
そういう人たちをターゲットにした金融商品が販売されています。例えば、「リスク限定型」あるいは「下値限定型」の投資信託。これは、投資信託の個別の商品であるファンドの価格が一定以下に値下がりしたら、そこで繰り上げ償還、つまり運用をやめてファンドの資産を購入者に返すといった仕組みになっています。
これなら、値下がりによる損失が限定されるので、ものすごく損をすることもない代わりに、値上がりも抑えられます。“限定”のための仕掛けには高いコストがかかり、それがファンドの資産から差し引かれることもあって、資産を増やすことは期待できません。
また、通常のファンドは一時的に大きく値下がりすることがあっても、長期で保有していれば価格が回復する可能性もありますが、リスク限定型や下値限定型は大きく値下がりすると、それが一時的なものであってもそこで運用がストップしてしまい、保有し続けることができません。
「元本確保型」や「利回り確保型」といった投資信託もありますが、投資信託である以上、元本や利回りが必ず確保されるわけではなく、正しくは「元本確保を目指す」「利回り確保を目指す」投資信託といえるでしょう。ある程度のリターンは期待できるものの、元本や利回りの確保を目指すために複雑な仕掛けががあり、そのための高いコストでリターンが抑えられてしまいます。
1つの金融商品で「増やす」と「減らさない」を両立させようとするのは、「食べたい、でも太りたくない」というのと同じようにムリなのです。「増やす」と「減らさない」は別々に考えて、それぞれに適した商品を組み合わせて使うのが正解です。
「減らさない」お金には個人向け国債も
資産を運用するときは、資産全体を目的によって分けましょう。
想定外の出来事が起こったときなどに備えるお金や、5年以内くらいに使う予定のあるお金は減っては困ります。「減らさない」ためには預貯金などの元本保証で安全性の高い金融商品を利用します。
5年以上先に必要になるお金は「増やす」ことも考えて、投資信託などを利用します。投資信託は値動きがありますが、長い期間にわたって積み立てで購入していくと、値下がりもメリットとなって資産を増やすことにつながります。投資信託の積み立ては、税制優遇のあるつみたてNISAやiDeCoを活用しましょう。
元本保証の金融商品には、預貯金のほかに、個人向け国債があります。毎月発行されていて、銀行や証券会社で1万円単位で購入できます。償還(満期)までの期間が3年、5年、10年の3タイプがあり、いずれも半年ごとに利子が支払われ、償還時には元本が返ってきます。また、購入時から1年たてば解約でき、元本が払い戻されます(ただし、直近2回分の利子相当額が差し引かれます)。元本と利子の支払いは国が保証しています。
3年物と5年物は固定金利で、発行時に決められた利率が償還まで適用されます。10年物は変動金利で、今後金利が上昇すれば受け取れる利子が増えます。
個人向け国債の金利は、発行されるときの3年、5年、10年の一般の国債の金利をもとにして決まりますが、最低利率が決まっていて0.05%より下がることはありません。現在は、どの年限のものも最低金利の0.05%になっていますが、メガバンクや地方銀行などの定期預金金利が0.002%であるのに比べると高いといえます。
ただし、定期預金は満期のときの利子の取り扱いを「元利継続」にして自動継続すると、利息が新しい元本に組み入れられるので、利息をむだなく活用できるのに対して、個人向け国債の利子は、銀行で購入した場合は普通預金に、証券会社で購入した場合は証券総合口座に入金されるので、それを何か別の方法で運用しないと、定期預金より高い金利のメリットは生かせません。
それを踏まえたうえで、減らしたくないお金は、使う時期に合わせて、3年、5年、10年の個人向け国債を利用することも考えてみるとよいでしょう。
