凍てつく海、衰弱するウミガメ5000匹救出 米テキサス

日経ナショナル ジオグラフィック社

ナショナルジオグラフィック日本版

米テキサス州サウスパドレ島の入江から、30キロ近くにもなる昏睡(こんすい)状態のアオウミガメを運んできたボランティアのアーヴィング・A・ヘルナンデス氏、デビッド・ダニエル・バレーラ氏、ロバート・"DJ"・ラーマ氏(PHOTOGRAPH BY SANDESH KADUR)

米テキサス州で、「骨まで凍るような寒さ」が停電や断水を引き起こした。同州のメキシコ湾沿岸のサウスパドレ島も予想外の寒さに襲われ、島民を挙げてのウミガメ救出作戦が行われた。

救出されたウミガメの数は4900匹以上だ。

これほどの数のウミガメが寒さで動けなくなったのは、米海洋大気局(NOAA)の機関、ウミガメ座礁・救助ネットワークが1980年に記録を取り始めて以来初めてのことだと、同機関のコーディネーター、ドナ・シェイバー氏は話す。その数は州全体で7000匹以上という。

テキサス州では、2021年2月の中ごろに北極圏から厳しい寒気が入り込み、気温が急激に低下した。ウミガメのような冷血動物の体温は周囲の温度に大きく影響される。そのため、サウスパドレ島周辺ではめったにないことだが水温がセ氏10度下回ったため、ウミガメの心拍数が下がり、意識はあっても動けなくなってしまった。

「ひれを動かして、呼吸のため水面から頭を上げなければいけないと分かっていても、体が言うことを聞かなくなってしまうのです」と説明するのは、サウスパドレ島でウミガメに関する教育、リハビリ、保護活動を行っている非営利組織「シータートル・インク」の事務局長、ウェンディ・ナイト氏だ。同組織は今回のウミガメ救助活動の指揮をとった。

救助されたあらゆる年齢、あらゆる大きさのウミガメが至る所にいるという。「ありとあらゆる場所です」とナイト氏は強調する。「お皿で言えば、サラダ皿サイズのウミガメから、ディナー皿サイズ、子ども用プールサイズのものも少なくありません」

そのうちの約500匹は動かず、救助センターに敷かれた防水シートの上でじっとしていた。みやげ物売り場まで含めて、すべての床がウミガメで埋め尽くされた。そのほかにも約4400匹(ほとんどがアオウミガメ、ケンプヒメウミガメ、アカウミガメ)が、島のコンベンションセンターに収容されていた。見かねた観光局が使用を許可したのだ。「建物内に、少なくともサッカー場1.5個分のウミガメがいました」

救出されていなければ、この寒波で島のウミガメは激減していただろうとナイト氏は言う。絶滅が危惧されるウミガメを40年にわたって保護してきた取り組みが帳消しになったほか、ウミガメが船にぶつかったり漁具に絡まったりする危険もあった。

これほどの数の動物を世話する苦労に加えて、当初、救助センターと広大なコンベンションセンターでは何日間も電力が使えなかったことが問題を大きくした。ただし、ナイト氏によれば幸運だったのは、寒さで動けなくなったウミガメは、徐々に温めなければならないということだった。暖房は使えなかったものの、屋内で防水シートの上にいるのは、水中に比べればはるかに暖かかった。

島民総出の救出劇

救助は海から始まった。21年2月13日から14日にかけて、商船や小型ヨットに乗った人びとが極寒の海を見て回り、低温のために動けなくなって水面に浮いている数百匹のウミガメを引き上げた。

21年2月16日になると、ウミガメが海岸に打ち上げられるようになった。救助のため野生生物に介入するタイミングを見極めるのは、保護活動家にとっても難しいことだが、今回は迷うまでもなかったとナイト氏は言う。この島のウミガメは、楽しみのために海岸で休んだりはしない。それが海岸にいるとすれば、苦しんでいるのは明らかだった。

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