
以前、別の「安べゑ」に行った時にはなかった。スタッフに聞くと「この1~2カ月」で始めたものという。試さないわけにはいかない。1杯目、2杯目は楽勝。3杯目も楽しく飲める。4杯目もなんとか、こなしたが、この上は一人飲みではちょっと無理。先ほどのスタッフも、「3杯目か4杯目で終わる人がほとんどですね」という。まあそうだろう。
料理は、単品つまみも多く、「さば味噌煮」も単品でもある(399円)。酒場メニューが豊富で、酒も日本酒や焼酎など最低限はそろっている。夜に酒場使いするのに便利な要素を持っている。夜の酒場使いはもちろん、さらに昼飲みもしやすいのが魅力なのだ。
「安べゑ」を経営するのは、居酒屋大手で海鮮居酒屋「はなの舞」などを500店以上展開するチムニー。主力業態の不振を脱出すべく作り出したのが「安べゑ」だ。
居酒屋大手各社は、ビジネスモデル転換に懸命だ。ワタミのように居酒屋から焼肉店に転換する例もあるが、もう一つの考え方が、従来のようにターミナル駅の駅近ビル上層階に大型店を設けるのではなく、私鉄などの郊外で小さめな物件を押さえ、大衆食堂と居酒屋の中間的な「居酒屋食堂」を作り出すというチャレンジだ。

そうした店は、営業時間短縮の中、飲酒の時間帯が早まったり、テレワークで時間を自由に使えるようになって自宅近くでの飲みをしたりするビジネスパーソンの需要をすくい取っていると言われる。「安べゑ」は、そのトップランナーにいる。
「安べゑ」を展開するチムニーは、「はなの舞」の展開を進める中、全国で複数の鮮魚市場で卸売の権利を獲得しており、鮮度の高い魚を安く全国へ配送できる仕組みを構築している。ほかの居酒屋チェーンでここまで6次産業化を全国的できている会社は少ない。価格帯が高い「はなの舞」が落ち込む中で、自社が持つ強みを最大限生かした店が「安べゑ」だったわけだ。寒ブリやサバ味噌煮がうまい理由も分かる。
一つだけお客として注文すると、料理は肉豆腐や揚げ物などオヤジ臭いつまみが多い。それが一つの特徴になっているし、女性や若い年代がそれを食べないとは思わないのだが、ちょっとした煮物とかゆで野菜とかがあってもいい。確かにフェアメニューにはゆでブロッコリーがあったが、今は女性よりオヤジの方が「野菜を食べなくちゃ」という強迫観念にかられている。この辺、よろしくお願いしますね。
(フードリンクニュース編集長 遠山敏之)