オリジナルに練り上げる教材に強み

Z会の命とも呼べる添削課題の「教材」は社内でオリジナルに練り上げる。基本的には外部に委託はしていない。教材づくりを担うのは「指導部」と呼ばれる専門部署。「(教材の)制作でも編集でもなく、指導と呼ぶところに、教材づくりから添削までをひとつながりでとらえるZ会らしさが出ている」(藤井氏)。Z会本社の正社員310人のうち、155人を指導部に割いている。「同業他社でここまで自前の人材を充てている例はないと思う」という。教材づくりへの力の入れ具合が人数割合からも感じ取れる。

この155人は編集者と作問者を兼ねている。外部の大学教授や中高教員らの執筆者と知恵を出し合いながら、設問を詰めていく。深い思考を導くのはもちろんだが、「設問そのものが面白いことも、作問にあたって意識している」という。問いの切り口や、正解に至る手順の設計など、面白みを感じさせるポイントは様々。藤井氏自身もかつての会員だが、「何年たっても、『あの問いは斬新だった』と思い出すことがある」(藤井氏)。

力を伸ばすために重要なポイントの一つに、難易度の設定がある。簡単に解けてしまうようでは、潜在能力を引き出せない。しかし、あまりに難しいと、かえって学ぶ意欲をくじいてしまいかねない。正解に手が届きそうで、なかなか容易に答えが得られない。そんな適度な「知の背伸び」を促すような難易度が求められる。

かつては同じコースを選んでいれば、同じ教材が送られてきたが、今は会員の習熟度に見合った教材を送ってもらえる。習熟度別のきめこまやかな設定が導入されたおかげで、「これまで以上に本人のやる気を引き出しやすい教材の提供が可能になった」(藤井氏)という。

Z会の通信教育では今も紙の教材が健在だ

難易度の適切な設定は、書き上げた答案を戻す提出率を保つうえでも重要になってくる。きちんと解答できた自信がそこそこないと、提出がおっくうになってしまいがちだ。「昔は提出できない会員が空欄だらけの用紙を『白い悪魔』と呼んだという話も残っている。Z会の封筒を見るのすらこわがる人もいたようだ」(藤井氏)というが、今では事情が様変わり。「小学生タブレットコース」の提出率は約9割にも達するという。「双方向で進み具合を確認できるツールが会員のモチベーションも支えている」(藤井氏)

会員とのコンタクトポイントとなるだけに、タブレットの性能アップにも余念がない。21年にリリースする予定の次世代タブレットも自社で開発した。こだわりをみせたのは、書き心地だという。ペンの筆圧やタッチを精密に感知する機能を持たせた。「タブレットでもしっかり書くことが思考を深めるうえでも大事。ただのデータ入力マシンではない」と、郵便で培ったノウハウを新時代のデバイスにも生かす。

学習指導要領が見直され、大学入試のありようも変化が続くが、藤井氏は「むしろZ会流の問いの立て方に時代が追いついてきた」とみる。暗記量の多さを競わせるような試験傾向から、論述を通して、思考プロセスを試すような方向に変わりつつある動きを、「本質を問う点で好ましい変化」と受け止める。

「設問の意図を読み取ったうえで、自分の考えを言葉にまとめ、その評価を採点者から言葉で受け取る通信添削の仕組みは、単なるマークシート式採点とは異なり、論理的な思考や言葉を仲立ちにしたコミュニケーション能力も養う。それは大学入試の先にもずっと役に立つ」。アルファベットはZで行き止まりだが、Z会は大学のさらに先まで、学ぶ者を導こうとしているようだ。

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