「ノーと言わない」パートナーに救われた

直感的にもみえる緒方氏のビジョンは、自らの足で稼いだ膨大な情報と知見、そしてとことん「面白いこと」にこだわり考え抜く情熱に裏付けされている。

とはいえ、それを具現化していく道のりは生易しいものではない。市場がすでに存在している産業とは異なり、新奇性の高いサービスでは、使い手の理解を得るのにも一苦労だ。パーソナリティが200人程度の規模だった近年までは、トップである緒方氏自らがその一人ひとりと対面し、ボイシーを通じて実現したい価値について言葉を尽くして説明を重ねた。

「パーソナリティの一部からは『コンテンツを企画して発信するのに、なぜ金銭報酬がもらえないのか』と反発を受けました。始めて間もない時期は実績も少ないわけですから、『こんなにみんな盛り上がっています』と証拠を示すのも難しいでしょう」

「全員が『投げて打つ野球』しか知らない世界で、『蹴るサッカー』の楽しさを叫ぶようなものです。『蹴って楽しい? 何か得なことある?』という質問に対して、理詰めで答え切るのは不可能ですよ。面白そうだからやってみたいと共感してくれる人をまずは集めて、そこから少しずつ輪を広げてきました」

新事業の価値を理解してもらうことが難しいのは、社内でも同じだ。だからこそ、スタートアップは組織づくりに苦心する。そんな中、共同創業者のエンジニア、窪田雄司氏との強固なパートナーシップを築けたことは、大きな力になった。「(窪田氏は)絶対にノーと言わない人」だったという。

緒方氏は「耳から情報を得る時代」の熱気を感じ取る

「UX(ユーザー体験)の設計一つとっても、これまでにないものをつくり出すわけだから、できない理由はいくらでも見つけられる。『技術的に難しい』とか『今のリソース(資源)では無理だ』とか。でも、僕がアイデアを出すと、彼は決まって『まあ、やってみましょうか』と応じてくれます。『乗り気になってもらえるか』『説得できるか』なんてことに労力をかけずに、やってみたいことを思い切り貫けた。本当に助けられています」

2021年2月現在は組織も40人ほどの規模になった。事業を育てた先に見据える大きな夢は、「スマートフォンの次の時代をつくる」だ。番組の再生数に応じてパーソナリティが収益を得られるような新しい仕組みの導入も21年中に予定している。

スマートスピーカーやワイヤレスイヤホンの普及により、「人々がテレビやスマートフォンの画面にかじりつくことなく、耳から音で情報を得るようになる時代はすぐそこまで来ている」と緒方氏。市場での競争では米国や中国などの海外勢が一歩先を行くが、日本発のサービスで、すでに始まりつつある変革のけん引役を担おうと、「声の力」を信じる緒方氏は情熱を燃やしている。

(ライター 加藤藍子)

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