画面から耳へ 「声の配信」で挑むスマホの次の時代Voicy代表 緒方憲太郎氏(下)

Voicyの緒方憲太郎代表は起業家支援を経て、自分も起業家に転じた
Voicyの緒方憲太郎代表は起業家支援を経て、自分も起業家に転じた

世界各地を放浪する中で、何もないところから新しい事業を立ち上げる「ゼロイチ」経験に恵まれたVoicy(ボイシー、東京・渋谷)代表の緒方憲太郎氏。日本に帰国後、その情熱はなぜ、音声コンテンツの配信事業へ向けられるようになっていったのか。見据える先には、スケールの大きな夢がある。

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大手会計事務所のニューヨーク支店で勤務後、帰国した。新天地として選んだのは、デロイトトーマツベンチャーサポートでの起業家支援だ。同社員の知人から、「走り回ることをいとわない会計士を探している。一緒にやらないか」と誘われて入社した。

海外放浪のきっかけは自分探しだったが、そこで会計士の枠にとらわれない活動に挑戦してきたことが、結果的に縁を引き寄せた。経営者に近い立場で、事業設計から資金調達まで、幅広く相談に乗る仕事を「天職だと感じた」と振り返る。

「会計士の専門スキルと経験値でやれたことなんて、必要とされることのせいぜい2%ぐらいではないでしょうか。自分の示せる支援メニューを増やすためには、とにかく場数を踏んでいくしかないと考え、当初は毎日5社ほどの経営者に会いにいっていました。話せば話すほど、自分が役に立てる幅が広がる。支援相手の起業家のことも、その先にある社会もハッピーにできる。泥臭い世界でしたが、面白くてとりこになりました」

支援したのは約300社。急成長を遂げる企業があれば、ピンチに追い込まれる企業もあった。数え切れないほどのドラマを肌で感じて、たどり着いた持論がある。

「既存のゲームの中で優位性を上げていこうとする企業は、厳密には『スタートアップ』とはいわない。『スタートアップ』とは、これまでになかった市場や文化、価値を生み出す企業のことだ」

そんなスタートアップならではの挑戦に、自分も一人の起業家として身を投じてみたいと思うようになった。

いくつかの事業アイデアを練る中で目に留まったのが、米国発のニュース音読アプリ「Umano(ウマノ)」だった。様々なニュースを、プロの声優らが読み上げるサービス。一時は成長を期待されたが、緒方氏が創業準備を始めた2015年ごろにはサービスを終了していた。

「やり方を変えれば、可能性は大いにあった事業だと思ったんです。米アップルの音声アシスタント機能『Siri(シリ)』が出てきて、じきに音声の時代が来るという予感があった」

「もともと人の声というものに強い魅力を感じていたので、その魅力を最大化させる独自サービスをつくり出したいと考えました。当時、国内で類似のサービスはほとんどなかった。だからこそ『スタートアップ』としてやる価値があると思いましたね」

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アナウンサー学校で「修行」
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