『全裸監督』武正晴総監督 Netflixと組んでみると…

日経エンタテインメント!

大ヒットした前作に続き、Netflixオリジナルシリーズ『全裸監督 シーズン2』の総監督を務める武正晴。2020年に4作もの映画を公開し、邦画をけん引する鬼才が、Netflixと組んで感じたこととは。

1967年生まれ、愛知県出身。工藤栄一、崔洋一、井筒和幸らの助監督を経て、2007年監督デビュー。14年に『百円の恋』を監督し、日本アカデミー賞優秀監督賞など多くの賞を受賞。主な作品は『嘘八百』『銃』『ホテルローヤル』『アンダードッグ』など(写真:中村嘉昭)

「日本で性愛的なものを描こうとすると、かなり制約が出てくるし、まず企画者たちがやりたがらない。この5~6年はそれが顕著で、つまんないなと思ってたんですよ。だから18年の春に『全裸監督』のオファーを受けたときは、『よくこんな企画をやるな』と。『Netflixって、何考えてるの?』とも思いました(笑)。

当時はまだ脚本はなくて、プロットをもとに、プロデューサーや脚本家たちが会議をしている段階。話を聞いていたら、自分が東京に出てきた80年代のことを思い出して。『歌舞伎町はこうだったよ』とか証言者として話をして、当時のエッセンスを入れていきました」

撮影は、歌舞伎町を再現した巨大なロケセットなどで行われ、ハワイロケも敢行。編集段階ではデビッド・リンチ作品のカラリストが2週間かけて色調整を行うなど、ワールドワイドな制作を行った。

「最近の邦画は予算がどんどん先細りしていたから、何か思いついても、諦めるのが仕事だったんです。でもNetflixでは予算が“普通”にある。『やっと普通のことができるな』と思いました。特にそれを感じたのは、村西の事務所を、室内だけでなく、外まで含めてセットとして組めたこと。あの歌舞伎町のセットは、僕が知るなかで一番金がかかってましたね。

不安だったのは、性描写。思い切りやってやろうという気持ちはあったけど、僕らもこれだけスケベなことはやったことがない(笑)。一歩間違えれば2度と地上で仕事ができなくなると思ったし、女性も見るだろうから、女性の描き方にはかなり頭と技術を使いました。

配信してうれしかったのは、そんなに叱られなかったこと(笑)。国内外のお客さんが見てくれて、『面白い』と言ってくれた。この先、生きていける気がしましたよ」

手間と暇がかけられる現場

昭和から平成への境目で幕を閉じた『全裸監督』。今年配信予定の『全裸監督 シーズン2』では、その後の村西と仲間たちの物語が描かれる。

「よく現場で『パート2をやりましょう』と盛り上がるけど、やれたためしがない(笑)。それがあっという間にやることになったので、みんな喜びました。ところが撮影に入る頃には、マスクをしなきゃいけない時代になって……。厳しい状況だからこそ、前作以上に団結力が生まれたし、Netflixからも衛生管理など手厚く支援をしてもらって乗り越えられました。

今編集中ですが、すごく良いものが撮れていると思いますよ。僕のキャリア30年で出会ったキャスト、スタッフがほとんど集まってくれたのが、『2』の現場なんですよ。こういうことは、二度とないはず。『面白い!』と言ってくれる人が1人でも増えるように、しっかり仕上げて届けたいです」

『2』を撮り終えて感じる、Netflixと組む魅力とは。

「魅力は、(予算や撮影期間など)“普通の撮影ができる”環境があることです。予算があるから、手間と暇がかけられる。僕が若い頃は、『おまえ、何日メシ食わずに働ける?』とか『交通費がかかるから明日までに引っ越せ』とか、意味不明なことを言われたもんですよ(笑)。そんな現場だから、若い人が入って来ない。でも最初にNetflixの現場を経験できたら、『すげえ! このセット』とか『俺も出世したら絶対こういう作品やりたい』と感じると思うんですよ。 今回、若いスタッフにとっては貴重な経験になったはず。この環境を原点にして、広く伝承してほしいです」

『全裸監督 シーズン2』
 前作に続き、山田孝之が主演を務め、AV業界の革命児・村西とおるを演じる。AV女優・黒木香を演じた森田望智は、前作を機に躍進した。「オーディションで脇毛を書いてきたのは彼女だけ。僕は当時の黒木さんを見たことがあるけど、フォルムも似てた」。満島真之介、玉山鉄二、伊藤沙莉ら主要キャストが続投。Netflixで2021年独占配信予定。

(ライター 泊貴洋)

[日経エンタテインメント! 2021年2月号の記事を再構成]

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