金融業界に身を置いているので、こうした時代の金融業の役割を考えます。金融業はそれ自体がユーザーへのサティスファクション(満足)ではありません。例えば、おいしいものを食べると気持ちがうれしくなったり、エンターテインメントを見て面白くて高揚したりすることはありますが、自分の金融口座の数字が増えても「わあ、うれしい」と盛り上がる人は少ないのではないでしょうか。

お客さんの「やりたいこと」を支える

金融サービスはダイレクトに高揚感を提供するものではなくて、お客さんが「やろうとしていること」を支えるものです。そこに思いをはせて取り組まないと、仕事として、ビジネスとして間違えてしまう可能性があると気をつけています。自分の34年の金融人生で毎日お客さんの最終目標をイメージできていたか、と振り返るとちょっと自信はありません。

でも、人生の目的や生き方が大きく変わりかねない時代に働いているわけですから、お客さんを支える私たちが失敗してはいけない、と今まで以上に強く思うようになりました。経済が右肩上がりの時代だと考えないようなことですが、「支える我々(金融)が間違えられない」ということを肝に銘じていきたいと思っています。

松本大
1963年埼玉県生まれ。87年東大法卒、ソロモン・ブラザーズ・アジア証券を経てゴールドマン・サックス証券でゼネラル・パートナーに就任。99年マネックス設立。2004年マネックス・ビーンズ・ホールディングス(現マネックスグループ)社長、13年6月から会長兼社長。08年から13年まで東京証券取引所の社外取締役、現在は米マスターカードの社外取締役を務める。

(笠原昌人)

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