UDCが何を目指しているかを示す良い例が、ジョージア州ストーンマウンテンの岩肌に刻まれた、南部連合の英雄であるデイビス、リー、ジャクソンの巨大な彫刻だろう。UDCが最初にこのモニュメントを構想したのは1912年で、完成までに60年を費やす大事業だった。

UDCが南部連合をたたえる姿勢は断固たるものだ。UDCのウェブサイトに掲載されている2018年に発表された声明から抜粋する。「南部連合を毛嫌いする人々がいるのは本当に残念です。南部連合に属した私たちの先祖は、過去も現在も米国人です。私たちは、先祖の行動を非難する立場にはありません。また、19世紀の価値基準を21世紀の米国人に押し付けることもしません」
声明は次のように結ばれている。「私たちと一緒にヘイトグループを弾劾しましょう。そして、南部連合に関するモニュメントは、国民が共有する米国史の一部であり、現状のまま残すべきだとはっきり主張しましょう」
多くのアフリカ系米国人は、南部連合のシンボルが称賛の対象となっていることに、長い間いら立ちを覚えてきた。だが、そのほかのさまざまな人種の米国人が、人種や人種差別の問題がどう理解されているか、また象徴的にも政治的にも公の場でどう扱われているかを、社会全体の喫緊の問題として考え始めたのは、フロイド氏の事件がきっかけだった。
フロイド氏が殺害される2カ月ほど前、ミシシッピ州のテイト・リーブス州知事は、20年4月を南部連合の歴史的遺産をたたえる月間にすると発表した。ミシシッピは全米で最もアフリカ系の人口比率が高い州だが、知事の決定は驚くものではなく、歴代の知事の慣例を踏襲するものだった。
知事の声明文に奴隷制への言及はなく、「全米国人が米国の歴史を振り返り、自らの失敗と成功から学び、過去と現在に学んだ教訓が、私たちを未来へと導くのだということを、深く理解することが大切です」と言っただけだった。
だが、フロイド氏の死後、全米をはじめ世界各地で抗議活動が巻き起こると、ミシシッピ州の世論が変化した。州旗が南部連合と決別する日がとうとうやって来たのだ。
元州最高裁判所判事のアンダーソン氏は、新しい州旗のデザインを決める委員会の委員長に任命された。委員会の選定を経て20年11月に行われた住民投票で承認された新デザインには、州の花であるモクレンが描かれている。アンダーソン氏は、社会に役立つうれしい仕事だったと感じている。「正直なところ、自分が生きている間に州旗から南軍旗が消えることはないだろうと思っていました」。リーブス知事の署名により、126年の歴史をもつ州旗を廃止する法律が成立した後、アンダーソン氏はそう語った。
(文 フィリップ・モリス、写真 クリス・グレイブス、日経ナショナル ジオグラフィック社)
[ナショナル ジオグラフィック 2021年2月号の記事を再構成]