2021/2/14

ブランケットで自分色に

実はそれらについて、筆者も乗り込んですぐに気づいていた。けれど、特にピンとこなかった。むしろ、わざとらしい、とさえ思っていた。ところが、高速道路での極上快適高速移動空間を体感するや、とってもオシャレに思えてきた。静止しているときと走っているときとで、見え方が違う。オレンジ、ターコイズブルー、ライトグレーの色と素材の組み合わせが、走行中に現れる空間においてのみ、ステキだな、と感じるのだ。

いや、そうではなくて、快適な動的性能にあまりに感銘を受けたものだから、なにもかもがよく見え始めたという、筆者の気分の問題なのかもしれない。であるとしても、もしそういう気分をシトロエン・ベルランゴがもたらしてくれるのだとしたら、それだけでこのクルマには大いに価値がある。

先進運転支援システムは全グレードで同じ仕様。ストップ&ゴー機能付きACC(30~180km/h)や車線維持支援機能、ブラインドスポットモニターなどを装備する

キャビンも荷室も広大だから、大いに使い勝手がある。居住空間は広過ぎて、冷え込んだ早朝はヒーターの容量が足りず、足元が寒かった。ぜひオシャレなブランケットを車内に持ち込んで、自分色に染めたいものだ。この場合、ブランケットが単なる飾りではなくて、実用上必要だというところが働くクルマっぽくて喜ばしい。

もう一つ気づいた小さな欠点というか、不思議なことは、いまどき、500ccのペットボトルとかコンビニのコーヒーとかが入りそうなドリンクホルダーが存在しないことだ。う~む、車内にそういうものをフランス人は持ち込まないのでしょうか。たぶんそうなのだ。カフェはカフェで飲む。缶コーヒーとかコンビニのコーヒーなんか飲まない。フランス人にとってはそういうものなのだ、きっと。

カングーあやうしか!?

2020年10月からカタログモデルとしてラインアップに加わったシトロエン・ベルランゴ。日本仕様のパワートレインは1.5リッターディーゼルターボと8段ATの組み合わせのみ。装備の違いで3種類のグレードがあり、今回ご紹介したのはフィールというシンプルな装備のベーシックモデルで、312万円。

2019年10月18日に発表した特別仕様車デビューエディションは、翌19日の朝9時からオンライン予約を開始するや、わずか5時間半で用意した台数が完売。急きょ、追加した2回目のおかわりオンライン予約でも5時間半で完売しちゃったという、コロナにも負ケズの大人気を誇る(当時はコロナの騒動はなかったけど)。

リアシート使用時の荷室容量は597リッター。デッキボードは写真の中段のほか、上段と下段にも固定できる

プジョーにも「リフター」というベルランゴの双子車があって、そちらも同時期にデビューエディションが先行発売になったのに、あまり話題にならなかった。それはなぜなのだろう? おそらくはイメージの問題だろうと筆者は思う。シトロエンには「タイプH(アッシュ)」という、ヘンテコなカタチの前輪駆動の商用車があった。第2次大戦後間もない1947年に登場したこの“ブリキの箱”は、スライディングドアや低床式貨物スペースなど、使うひとのことをおもんぱかった工夫がいち早く取り入れられた働くクルマだった。たちまち人気となり、フランスの風景の一部となった。プジョーには、タイプHに匹敵する商用車が、少なくとも私たちニッポン人の頭のなかにはなかったし、いまもない。おまけにリフターはSUVっぽくもあって新しい。

それに対して、シトロエン・ベルランゴはタイプHの生まれ変わりである、と極東では認識された。というのが筆者の推測で、だからこそシトロエニストから注文がバシバシ入った。そして、クルマの出来がよいだけに、ベルランゴは「ルノー・カングー」のようにファンを獲得するのではあるまいか。

カングー、あやうし!? 安心してください。ルノー・カングーはベルランゴよりもちょっぴり小さくて、価格も50万円ばかりお求めやすい。なので、すみ分けが可能となる。と私は思うのですけれど、さて……。

(ライター 今尾直樹)

■テスト車のデータ
シトロエン・ベルランゴ フィール
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4405×1850×1850mm
ホイールベース:2785mm
車重:1610kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:130PS(96kW)/3750rpm
最大トルク:300N・m(30.6kgf・m)/1750rpm
タイヤ:(前)205/60R16 96H/(後)205/60R16 96H(ミシュラン・プライマシー4)
燃費:18.0km/リッター(WLTCモード)
価格:312万円/テスト車=343万0420円
オプション装備:ナビゲーションシステム(24万2000円)/ETC 2.0(4万4550円)/ラバーフロアマット(2万3870円)

[webCG 2021年1月16日の記事を再構成]

MONO TRENDY連載記事一覧