3密避ける完全個室も テレワークカフェを賢く利用

政府はこのほど、2020年4月に続いて2回目となる緊急事態宣言を発令した。長引くコロナ禍により、出社せずに自宅などで業務を行うテレワークが進んでいる。2020年9月の東京都の発表によれば、都内企業(従業員30人以上)のテレワーク導入率は57.8%。前年度同時期(25.1%)に比べて2.3倍に大きく上昇しており、中小企業でも導入が進んでいるようだ。2回目の緊急事態宣言においても、一層のテレワークが求められている。
一方、「家族が家にいて仕事に集中できない」「会社のようにインターネット環境が整っていない」など、自宅でスムーズに仕事を進めるのは難しいというビジネスパーソンも少なくない。連合が行った「テレワークに関する調査2020」によれば、小学生以下の子どもを抱える男女の約8割が「テレワークの困難さを感じている」と回答している。
そこで利用したいのが、インターネット接続や電源などテレワーク向けの環境が整った専用空間だ。コロナの影響で利用者が減ってしまったホテルやレンタルスペースなどでも、テレワーク向けプランが続々登場。さらに、食事メニューにこだわるカラオケチェーンや、ビジネスツールも設置されている便利なカフェなど、仕事に集中しながら飲食もとれるテレワークスペースが出現している。
首都圏を中心に20店舗展開するカラオケチェーン「パセラ」では、カラオケ個室をテレワーク用の"個室カフェ"として使えるサービス「おしごとパセラ」を2020年3月から実施。都内8店舗と、横浜、大阪それぞれ1店舗の計10店舗でサービスを導入している。「個室なので人との接触が少なく、コロナ感染リスクも抑えられる。感染予防に関しては、こまめな消毒・換気や従業員の検温をはじめ、店舗入り口や全個室に消毒用アルコールを設置するなど、独自のガイドラインを設けて全店で徹底しているので、安心して利用してほしい」とパセラリゾーツの清原将也さんは話す。2回目の緊急事態宣言で、営業時間を短縮するなど、さらに気を引き締めてコロナ対策を実施しているという。
料金は全店舗共通で、2時間利用で税込み1400円から利用可能。利用時間に応じて1時間当たりの金額が安くなり、最長7時間(同3500円)まで利用可能だ。料金は1人1室当たりの金額で、人数分の料金を払えば、1室を複数人で使用することも可能。小規模な会議や、資料をテーブルに大きく広げてチームで話し合いたいときなどに便利だ。


同店の最大の魅力は、防音機能を備えたカラオケボックスなので、周囲の物音などを気にせず個室で仕事ができるという点だろう。機密性の高い会話も周囲をはばからずにできるので、オープンカフェよりも比較的安心だ。各店舗とも「おしごとパセラ」の利用者と一般のカラオケ利用者でフロアを分けているため、音楽の音漏れもほとんど気にならないという。
全室フリーWi-Fi対応で、デスクライトやPCなどの各種ケーブル、Bluetooth対応のスピーカーフォン、ホワイトボードなど、ビジネスに必要な備品も10種類以上用意。アイマスクや低反発ウレタンクッションなど、休憩中に向けたアイテムも貸し出しており、「おしごとパセラ」の利用者はすべて無料で使用できる。
同サービスを利用する場合、1時間につき1杯ドリンクが無料にもなる。29種類のソフトドリンク、12種類のアルコールから好きなものを選ぶことができる。また、通常メニューのほかに「おしごとパセラ」利用者限定で、税込み500円で注文できるランチメニューを4種類も用意。同社系列のレストランで腕を磨いたシェフが各店のキッチンで調理を手掛けているため、「焼きチーズカレー」「ガパオライス」といったクオリティーの高いメニューが手ごろな値段で食べられる。
一般的なコワーキングスペースでは会員制をとるところが多いのだが、同店のサービスは登録なしで誰でもいつでも利用可能なのも魅力だ。営業時間は店舗によって異なるが、ビジネスアワーに合わせて朝9時半から利用できるところもある。「おしごとパセラ」の利用は全店午後7時までだ。「新宿、渋谷、上野など主要駅近くで利用できる利便性の高さが好評のようです。出先で急なウェブ会議の予定が入り、近くで仕事ができる場所を検索してこの店に来たという利用者も多いですね」(清原さん)。
今後はテレワークを導入している企業に向けたサービス告知を積極的に行っていくという。

一方、日本たばこ産業(JT)が販売する、煙の出ない加熱式たばこ「Ploom」(プルーム)を販売する専門店「Ploom Shop 渋谷店」(東京・渋谷)に併設されている「RETHINK CAFE SHIBUYA」(リシンク カフェ シブヤ)は、テレワークに便利なビジネスツールが利用できるカフェ。プルーム専門店とカフェが併設された店舗は全国に7店舗展開しており、そのうち、渋谷店はビジネスマンやクリエーター向けのワークスペースが設けられている唯一の店舗だ。なお、たばこ製品を取り扱うため、20歳未満は入店禁止となっている。
もともとは「喫煙者も非喫煙者も共存して活動できるクリーンなスペース」を目指して2017年11月にオープン。店内は全席禁煙だが、プルーム製品のみ使用可能で、無料レンタルも行っている。「プルームを使いながら仕事や食事がしたいという方、非喫煙者でカフェのみ利用したい方、半々ぐらいの割合で利用していただいています」(同店店長の仲村猛さん)

1階はカフェの注文カウンターと客席が10席ほど。2階は15席ほどの客席とビジネス用ツールが置かれた「ワークスペース」、プルーム製品の購入やテイスティングができるショップで構成されている。ソーシャルディスタンスを保つため、客席は通常の半数程度まで減らしているという。店内はフリーWi-Fiが使用可能。2階窓側のカウンター席やテーブル席など計6カ所に電源があり、自由に使うことができる。
2階の「ワークスペース」と名付けられた一角には、コピー機が1台と、筆記具、付箋、クリップなどのビジネス向けツールが置かれており、すべて無料で利用することが可能(1人1品以上の飲食メニューの注文が必要)。まさにテレワーク向きで、利用者からは「無料でコピー機などが使えるのがありがたい」「ゆっくり仕事ができる環境が整っていて利用しやすい」という声が届いているという。
1階のカウンターではドリンクや食事メニューが注文できる。食事メニューは「DONBURI」(税別780円)のみ。大麦雑穀米やフォーなど3種の「ベース」(主食)、ローストビーフなど4種の「メイン」(主菜)、緑黄色野菜など3種の「サラダ」から、それぞれ1種ずつ自由に組み合わせることができる。さらに標準のトッピングとしてポテトサラダ、アボカド、半熟卵などが添えられ、野菜もたんぱく質もとれるヘルシーな丼が完成する。

渋谷という場所柄もあり、カフェの利用客は20~30代が中心で、男女比は半々。混雑時などを除いては利用時間に制限はないため、午前中から来店してランチを食べ、そのまま夕方までテレワークをしているような長時間利用客も多いとのこと。また、「店内でウェブ会議をしている人もかなり目立ちます」と仲村さんは話してくれた。
同店のある場所は、JRの原宿駅と渋谷駅のちょうど中間にあたる。アパレルや雑貨のショップが多く、落ち着いてテレワークができるような場所が少ないエリアだ。同エリアでカフェとして長時間利用でき、さらにプルームの使用OKという、テレワーカーにとっては喫煙者・非喫煙者問わず貴重な場所だ。取材当日もプルームを吸いながらパソコンで仕事をしている客の姿が見られたが、煙も出ずにおいもまったく気にならなかった。
今回取材した店舗は、いずれも会員登録が不要で一般的なカフェ同様に気軽に利用できる。また、前出の「テレワークに関する調査2020」によれば、テレワーカーの半数以上が「機材の設置・更新に関わる費用」「文房具・宅配等事務費用」について会社からの補助がないと回答しており、自己負担の多いテレワークをサポートしてくれる頼もしい存在だ。
2回目の緊急事態宣言が発令され、当面ウィズコロナ時代は続くのだろう。会社や自宅のほかに集中して仕事ができる第3のスペースは、賢く働くビジネスパーソンならぜひ押さえておきたい場所だ。
(フードライター 古滝直実)
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