独学へといざなう 分断時代を予言した歴史家の思考法紀伊国屋書店大手町ビル店

特設の平台に4列で展示する(紀伊国屋書店大手町ビル店)
特設の平台に4列で展示する(紀伊国屋書店大手町ビル店)

ビジネス街の書店をめぐりながら、その時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今回はいつもの定点観測に戻る。訪れたのは紀伊国屋書店大手町ビル店だ。三が日を終えたばかりのオフィス街の店舗は閑散としていた。1都3県に緊急事態宣言が発令される直前とあって、来店客がいつ戻ってくるかも見通せない。そんな中、書店員が注目したのは、ソ連崩壊やブレグジットなどを予測したことで知られるフランスの歴史人口学者が自らの思考法を解き明かした本だった。

日本語オリジナルで「思考する」とはなにかを語る

その本はエマニュエル・トッド『エマニュエル・トッドの思考地図』(大野舞訳、筑摩書房)。トッド氏はソ連崩壊やアラブの春、ブレグジットなど今日の分断へとつながる事象を予言したとして知られる。歴史人口学者としても『帝国以後』など本格的な研究著作があり、『シャルリとは誰か?』『大分断』など、時事的なテーマを扱った本も数多い。その著者に「思考する」とはなにか、というテーマで本を作りたいと筑摩書房が持ちかけ、日本語オリジナルの本として生まれたのが本書だ。

歴史学者の思考法だから厳密にはビジネス書とは言いがたい。ところが、ページを開くと、見開き2ページの「思考の見取り図」が出てきて、これがビジネス脳を刺激する。「インプット→着想→検証→分析・洞察→予測」という流れを横軸に、「読書」「発見」「客観性」など思考のキーワードがちりばめられている。

よくあるビジネス思考法と似ているようでもあり、違うようでもある。その似ているところと違うところを精査してみれば、イノベーションが求められる今のビジネスにもその思考法が生かせるのではないか。そんな気になってくる本だ。実際ビジネス街に立地するこの書店で反応がいい。「年末は30日までの営業だったが、その最終週の3日間でよく売れた」と、同書店でビジネス書を担当する西山崇之さんは話す。

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