
日本で食べられる主なカキは「真ガキ」と「岩ガキ」。真ガキは水温が一定の高さになると一気に大量産卵するのに対し、岩ガキは時間をかけてゆっくり産卵する。そのため、身がやせ細ってしまったり、栄養がごっそり失われてしまったりすることがない。岩ガキは時間をかけてゆっくり成長するので、殻と身が大きく育ち、ジューシーな味わいが特徴だ。
「三倍体カキ」は広島県立水産海洋技術センターがバイオ技術を用いて真ガキを品種改良した広島県が誇るブランドガキ。産卵しないので、夏でも身が細ってまずくなることはない。
さらに「南半球では季節が真逆となるので、『R』のつかないその時期は冬。ニュージーランドなどから輸入すれば、ちょうどおいしいカキを食べることもできます」と、高瀬さんは日本のオイスターバーで生ガキを1年じゅう楽しめる理由を説明してくれた。
まとめてみると、北半球では真ガキはRのつかない5月から8月はおいしくないが、その時期は日本ではおいしい岩ガキもある。産卵しない真ガキもあるし、国内外から旬を迎えるカキを取り寄せられる。そのため1年を通してカキを食べられる、ということになろうか。つまり、「品種改良」や「流通網の発達」によって「Rがつかない月に食べるな」は、今は昔の話となっているようだ。
このようにあの手この手で「1年じゅう食べたい!」という熱狂的なファンがいる一方、一度「あたった」経験をしてからは「絶対に口にしない」というアンチもいる。これもカキが「特別な存在」と思うゆえんである。この「あたる」とはいったい何なのか。また、カキはほかの貝に比べてあたりやすいのだろうか。
高瀬さんによれば、「そもそもカキ自体が菌やウイルスを持っているわけではありません。カキは1時間に20リットルもの海水を吸って吐くといわれています。その過程でエサと一緒に海水にいる菌やウイルスも取り込んでしまうのです。カキは内臓も含めてそのまま食べます。そのため、体内に菌やウイルスがいる状態で食べるとあたるということになります」とのこと。
なるほど、ツブ貝やホッキ貝などは内臓を取り除いて刺し身にする。内臓を取り除いて食べる貝類に比べて、内臓も一緒に食べるカキは海水にいる菌やウイルスにあたりやすいといえるかもしれない。
「ですので、生食用のカキは、そもそも育つ海域が菌やウイルスが極めて少ない清浄海域であることや、出荷前に浄化するなどをして安全に仕上げることが必要です」と高瀬さん。