このように増えたウイルスは、違う細胞に次々と感染していきます。細胞を出るときに、ウイルスが膜に穴を開け、細胞を殺すこともあります。エイリアンが人間のお腹を突き破って出てくるみたいですね。

人に感染するウイルスはごく一部ですが、ウイルスは地球上に無数に存在します。ウイルスは、生きた細胞の中でしか生存できないので、宿主が死ねば自分も死にます。ウイルスは、最初に強い毒性があるものがありますが、宿主に対して徐々に毒性をなくしていくことが多いです。もちろん、これはウイルス自身が生き延びるためです。だから、新型コロナウイルスも弱毒化していく可能性はあります。

有名な話ですが、インフルエンザウイルスは、本来水鳥の体内をすみかとしていました。しかし、水鳥はいまでは感染しても症状がありません。人も、昔より殺さなくなりました。ウイルスの生存戦略ですね。

なぜウイルスで病気になるのか

では、なぜウイルスで病気になったり死んだりするのでしょうか?

それは、先ほども触れた、ウイルスが強毒性である場合です。毒性にはいろいろなものがありますが、たとえば大量のウイルスをつくるために、細胞のエネルギーなどが乗っとられ、その結果消耗して細胞が死ぬなども毒性です。

また、ウイルスのいる細胞を、宿主の側の方の免疫システムが殺してしまうこともあるし、この免疫システムの過剰反応で死んでしまうこともあります。ちなみに、新型コロナウイルスの感染では、そのような過剰反応のひとつである、「サイトカインストーム」というものが死因のひとつでもあります。

ここに出したのは、本書が語る生命科学の一部分です。でも、ちょっと知っておくだけで、情報の見え方も変わってくるはずです。もし興味がわいたら、ぜひ生命科学について他にも詳しくなってください。

(日経BP 中野亜海)

吉森保
生命科学者、専門は細胞生物学。医学博士。大阪大学大学院生命機能研究科教授、医学系研究科教授。大阪大学理学部生物学科卒業後、同大学医学研究科中退、私大助手、ドイツ留学ののち、1996年オートファジー研究のパイオニア大隅良典氏(2016年ノーベル生理学・医学賞受賞)が国立基礎生物学研究所にラボを立ち上げたときに助教授として参加。国立遺伝学研究所教授として独立後、大阪大学微生物病研究所教授を経て、17年大阪大学栄誉教授、18年生命機能研究科長。

LIFE SCIENCE(ライフサイエンス) 長生きせざるをえない時代の生命科学講義

著者 : 吉森 保
出版 : 日経BP
価格 : 1,870 円(税込み)

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