「脱げないココピタ」はスニーカー履きの足もしっかりホールド

「脱げない」と言い切る専業のプライド

ファッションアイテムとしては割と地味な印象のある靴下分野で、異例とも呼べる大ヒット商品になったのは、2018年に発売したフットカバー「脱げないココピタ」だ。発売から2年で累計2000万足を販売した。「SUPER SOX」が15年間かかった記録を、わずか2年で抜き去った怪物商品だ。

悩みやトラブルに真正面から向き合う岡本らしいアプローチがヒットの理由だ。もともとフットカバーには「脱げやすい」という不満が強かった。あまりに脱げるので、「脱げるのはしかたがない」というあきらめの意識すら消費者の間には生まれていたが、岡本はこの不快感を見逃さなかった。足の動きと生地の伸縮を研究し、「コの字」形の滑り止めを開発。特許も得たこの滑り止めがかかとをしっかりホールドし、「脱げ」を防ぐしくみだ。

商品の完成度を示すのは、「脱げないココピタ」というネーミングだ。「脱げにくい」ではない。「脱げない」だ。よほどの自信がなければ、名乗れない商品名だが、「脱げるのは当たり前という消費者の思い込みをレッグウエア専業メーカーとして覆したかった」と、青柳氏は岡本社内の使命感を代弁する。国内靴下売上高が全国1位(繊研新聞調べ)という岡本のプライドが商品名ににじむ。

18年3月に女性向けの「脱げないココピタ」を発売したところ、SNS(交流サイト)で話題が広がり、フットカバーとしては空前のヒットに。「足の悩みに性別は関係ない」(青柳氏)と、6カ月後の同9月には「脱げないココピタ メンズ」を投入。かつて「SUPER SOX」を女性用に横展開したのとは逆に、女性用から男性用を派生させるという、ジェンダーをまたぐ商品開発を実現した。技術や顧客層、シーン、サイズなどを様々に組み合わせて、ヒット商品を縦横に拡張するのは、「岡本流ヒットの方程式」とみえる。

もともと医療用靴下を手掛けていた歴史もあって、岡本はレッグウエアを通して、「お客様の足もとの悩みに寄り添う」というミッションを掲げている。その姿勢を象徴するような商品が15年に登場した「靴下サプリ」シリーズだ。名前が示す通り、冷えやむくみをやわらげる、サプリメントのような効果を盛り込んでいる。以前から保温性や着圧機能をうたうレッグウエアは市場にあったが、「機能が疑わしい商品やファッション性が乏しい商品もあった」(青柳氏)。

「靴下サプリ」シリーズの「す~っとおやすみ ぬくもりソックス」は睡眠時の冷えを防ぎ、眠りをサポートする。膝・かかと・爪先の3カ所を特殊な発熱糸で集中的に温める設計も特許出願済み。「リモートワークで活動量が減ると、血行が悪くなって、体が冷えがち。コロナ禍は靴下の役割も変えつつある」という。

同じ「靴下サプリ」シリーズの「うずまいて 血行を促すソックス」はふくらはぎへ適度な圧をかけて、血流を促す。工夫したポイントの一つは「きつすぎない着圧」。着圧に興味はあっても、窮屈感を嫌って敬遠する人は少なくない。渦巻き状に圧をかける技術は特許を得ていて、「例のない編み方だったので、編み機までオリジナルに考案した」(青柳氏)。

「悩みを発見」→「解決策を練る」→「ものづくりに落とし込む」という岡本の実直な取り組みは「靴下サプリ」の開発でも変わらない。それまでの一般的な保温靴下の多くは、体温を逃がさないことに主眼が置かれていたが、岡本の研究開発チームは「足首のツボを温熱刺激して、体の内側から温める」という独自の答えを見付けた。「まるでこたつ」というわかりやすいネーミングで人気を集め、今では足首ウオーマーやレッグウオーマーにもシリーズ展開している。

成功した企業がやがて伸び悩む理由の一つは、成功体験の大きさが災いして、挑戦を忘れてしまうからだといわれる。岡本の場合、その逆をいくチャレンジ精神が相次ぐヒット商品を生み出してきたとみえる。防臭機能を押し出した「SUPER SOX」の成功に安住しないで、生活者がひそかに抱える「足の悩み」を丁寧に掘り起こし続けたことがオンリーワン商品の連発につながった。課題と解決策の間に、念入りな原因究明と地道な素材開発を欠かさない取り組みは、日本流ものづくりの底力を示すかのようだ。

管理職・ミドル世代の転職なら――「エグゼクティブ転職」

5分でわかる「エグゼクティブ力」
いま、あなたの市場価値は?

>> 診断を受けてみる(無料)

「エグゼクティブ転職」は、日本経済新聞社グループが運営する 次世代リーダーの転職支援サイトです

NIKKEI 日経HR


ビジネス書などの書評を紹介
ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら