「逃げる」も選択肢の1つに Web漫画家やしろあずき氏

やしろあずき氏と読者やフォロワーから贈り続けられ、同氏の代名詞ともなっているカラーコーン(撮影:疋田千里)
やしろあずき氏と読者やフォロワーから贈り続けられ、同氏の代名詞ともなっているカラーコーン(撮影:疋田千里)

SNSで話題のウェブ漫画家、やしろあずきさんが初の単著、『人生から「逃げる」コマンドを封印している人へ』(ダイヤモンド社)を出版しました。「3年は頑張って働くべきだ」「そもそも、自分は何がしたいんだろう?」――。会社や日常に違和感がある若者に向けて、エッジの効いた漫画と文章でヒントを示しています。音声メディアVoicyで放送している「ヤング日経」の大学生パーソナリティー、もちづきさんが自身の体験を踏まえ、やしろさんにインタビューしました。

「しょうがない」に違和感

――先日、出版した『人生から「逃げる」コマンドを封印している人へ』。この本を簡単に紹介してください。

「まあ簡単に説明してしまうとタイトルどうりです(笑)。人生においていろんな辛いこととか苦しいこと、嫌だなということがあった時、そこから一時的にでもいいんで逃げてみる。そんなコマンドがない人のために、『逃げる』コマンドがあれば自分はどうするか、っていうように考えられるようになる本です」

――私は現在、大学4年生で最終的には大学院に行くことにしましたが就活もしていました。この本の中で注目したのが「新卒カード」というワードです。私自身、就活中に「新卒は大事だから」という話を結構何度も聞ききました。やしろさん自身はどんなことを考えて就活していましたか。

「そうですね。まず新卒に関しては僕も最初はそう思ってましたね。やっぱり周りの空気もそうですし。周りを見ると、それしか考えてない人しかいませんでした。『新卒カードが使える今、この1年で決めなきゃダメだ』ということしか考えてない人とか、それをウリにしている企業とか」。

「結局、自分が行きたい業界だとか、自分の夢とかを捨てて、とりあえずどうでもいい企業だとか、大量採用しているような会社とかに入ってしまう。正直あんまり自分の中でも納得してないけど『しょうがない』と割り切ってしまう。そんな人を見てきて『それなんか違うんじゃないかな』っていうふうに思っていました。自分でいろいろ調べてる時、第二新卒というのもありましたし、『新卒カードだけにとらわれるのはちょっと違うな』というのを僕は就活しながら考えていましたね」

――そうなんですね。私はまだ社会に出た事がないので就活している立場だと、なんとなく周りが言うことが正しいのかなと思ってしまいます。やしろさんがこう書いていることで、「そういう選択肢もあったんだな」と気付かされました。

「もちろん僕が全部正しいわけではないです。いろんな人の話を聞くのも、もちろん重要だと思います。僕は意見の押しつけは絶対したくない。結局のところ僕は僕の本を読んでくれている人、すべての人の人生に責任を持つことはできません。僕も含め、いろんな人の話を聞いて最終的に自分の中でじゃあ僕はこういう活動でやっていこうとか、こういう気持ちで就活に臨んでいこうと思ってほしいです。逃げコマを読んで、『こういう考え方もあるならちょっと自分の中で足してみようかな』とか、自分には向いてる考え方とかそういうのを取捨選択の中の一つに加えてほしいなあっていう気持ちがあります」

情報に流されず、自分で整理

――自分の意見を持つのが大事で思考停止になるのも良くないと書いています。ただ、やっぱり大人がいるから、周りがいるからということで、自分の意見を持つのが難しい人もいるのかなって思います。自分の意見を持つためのコツはありますか。

「結局、今の時代って昔に比べて自分の意見が持ちづらいと思うんですよね。情報媒体が多すぎるのでいろんなとこから毎日毎日いろんな情報をインプットされているから、結局それに流されてしまう。自分が考えてるようで、結局全部受け売りだったというのはもちろんあると思います」「結局どんな考えでも周りの話が加わっている。ノイズが加わっているのはしょうがないことだと思うんですけど、僕は得た情報を整理しています。僕がやっていることといえば、毎日朝ニュースを見た後に情報を30分だけ自分の中で整理する時間を設ける。自分の中でその情報を流入するのを1回ストップしてみるっていうのが重要だと思うんですよね。メディアを見てる時間をパッと止めて、自分がメディアから持ってきたものを完全に自分の頭の中で整理する時間を作るべきかなと思っています」

――入れるだけで終わらせないということですね。

「そう、入れるだけで終わらせない。あんまり勉強しろ的なことは言いたくないですけど。ちょっとでも時間を作って、ツイッターのタイムライン見て終わりだけじゃなくて、見た後に5分ぐらい止めてみる。『こういう情報を得られたけど僕的にはどういう考えてるんだろうか』っていう時間を作るだけでも違ってくると思います」

興味あること、とにかく挑戦

――いろいろなことに挑戦したり体験したりしながら自分に何が向いているかを探したと思います。「自分がやりたいことはなんだろう」っていう悩みは就活の頃から社会人になった後もヤング世代につきまとう悩みかなと思います。やしろさん自身は実際にどのようなことに挑戦したり体験されたりしたんでしょうか。

「僕はちょっとでも興味があることは手を出そうという生き方をしてきました。今の日本はそういう意味で恵まれていると思っています。ある程度バイトしてお金(をためる)とか、やりたいと思ったこととか、興味ある事には手を出せるような環境があります。地方に住んでいたとしてもネットを介してどういうものかというのを見たりとか、経験してる人の実際の動画を見て経験することもできる」

「僕はちょっとでも自分は興味があったりとか、なんかこれ面白そうだなって思ったことは見てみたりやってみたりするってことを学生時代からやってきました」

――そのうちの一つに漫画があったんですね。

「そうですね。漫画はもともと書きたいなと思ってたんですけど、ほかのことをしている中でだいたい全部合わなかったり、飽きたりした中で最後に残って続けていたいものが漫画だったのです。取捨選択していながらやってきた感じですね。まあ残ったものだし、いろんなものを経験した結果、そこで得た知識や経験を漫画に生かすことができました」

「僕のフォロワーさんやファンの方から『やりたいことが見つからない。どうすればいいですか?』っていう質問はめちゃくちゃ来ます。結局のところ自分が好きになれるものとか、本気でやれるものって人間絶対一つはあります。ちょっとでも心の底から『これ面白そうかも』って思ったら手を出してみる。それで合わなかったら次に行けばいい話です。とにかく、いろんなものを経験していく。時間があるうちにやっておいたほうがいいと思います」

やしろ・あずき
ウェブ漫画家。自分の漫画事業を法人化した代表取締役も務める。ファイナルファンタジーVII(FF7)の人気キャラ「セフィロス」のフィギュアを使った動画が話題となり、「セフィロスの人」と呼ばれるようになった。家族や友人のネタ、三角コーンなどを題材にしたオンライン漫画で活動し、ウェブの様々なメディアで多数の漫画を連載している。横浜市出身、31歳

(聞き手はヤング日経パーソナリティーもちづき、構成は村野孝直)

インタビューの音声はヤング日経の12月26日配信で
ヤングなら、これだけは知っておこう!1日5本、日経ニュースを厳選し、サクッと短くお届けします。未来に向かって進むあなたと作る番組です。
https://voicy.jp/channel/874/115582
  • 著者 : やしろ あずき
  • 出版 : ダイヤモンド社
  • 価格 : 1,158円(税込み)

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