小栗旬が演じる曹操。冷徹な権力主義者とみられていたが新しい一面も(c)2020映画『新解釈・三國志』製作委員会

北島「劉備と義兄弟の誓いを交わす関羽と張飛をはじめ趙雲、周瑜ら個性あふれる武将が三国志には数多く登場します。当然キャスティングも面白くなる。今までの最速で自分の企画が通りました」

福田監督は映画、テレビドラマを手掛け、劇作家、放送作家、劇団座長でもある。コロナ禍の中「今日から俺は!!劇場版」をヒットさせるなど、日本のコメディー界をけん引する存在だ。出演を希望する若手俳優も相次いでいるという。そもそも「福田雄一」とは何者か。

北島「一言で言えば本当のプロフェッショナル。笑いの作品を製作しているのだから、撮影現場ではひりつく空気を一切出しません。公言しないものの、監督自身が発している暗黙のルールで『現場でどならない。ひりつかない、ケンカしない』を徹底しています」

福田雄一監督(c)2020映画『新解釈・三國志』製作委員会

かつての邦画の撮影現場では、いつもピリピリした雰囲気に包まれていることも少なくなかった。昭和の名匠、黒沢明監督の「影武者」では、撮影現場で対立した主役の勝新太郎が降板するアクシデントなども起きた。令和の「福田組」はひと味違う。

北島「緊張感を醸し出して、俳優の芝居を引き出させる方法もあるでしょう。しかし福田監督は、ひとえに役者が芝居しやすい環境をつくっています」

笑いのための脚本を緻密に作り上げながらも、必要なシーンになると監督自ら熱のこもった実演をして見せる。今回初めて参加した若手俳優のひとりは、撮影途中で笑い出してしまい、NGで撮り直し必至と覚悟していたのに「面白かったのでOK」と言われて驚いたそうだ。

松橋「プロデューサーという仕事は、まず企画を考え、次にふさわしい監督、脚本家、俳優は誰かと組み立てていきます。しかし福田監督はパートナー。ずっと一緒にやってきたので自然に『次は何をやりましょうか』と言える存在です」

松橋真三 1994年日本衛星放送(現WOWOW)入社。2000年公開の「バトル・ロワイアル」に協力プロデューサーとして参画。05年に独立。「るろうに剣心」「銀魂」など漫画作品の実写化を数多くヒットさせる。19年の「キングダム」は興行収入57億円超を記録した。クレデウス社長。

撮影現場のムードは、劇中の大泉・劉備が率いる「蜀」とも一脈通じるようだ。後漢王朝の文化を受け継いだ「魏」や地方政権の「呉」とは違い、国家再建という共通目標と人間関係だけで成立した、いわば古代のスタートアップ企業。ある種「緩い」組織でもある。

ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら