色をまとうインドの女性たち その力強さと美意識

2021/1/13
ナショナルジオグラフィック日本版

インド、オリッサ州の女性が木づちを振るって畑を耕していた。腕力と根気が必要な重労働だが、表情は明るかった(PHOTOGRAPH BY MASASHI MITSUI)

アジアの小さな村を旅してまわり、人々とふれあいながら撮影を続ける写真家の三井昌志さん。最新の写真集「Colorful Life 幸せな色を探して」(日経ナショナル ジオグラフィック社刊)から、鮮やかな色をまとうインドの女性たちの写真とその物語を紹介してもらった。

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2020年5月3日。インドの主要都市で色とりどりの花びらが空から大量に降ってくるという出来事があった。これは新型コロナウイルスと闘う医療従事者への感謝の気持ちを伝えるために、インド軍がヘリコプターを使って降らせたものだった。

とてもインドらしいニュースだと思った。インドの人々にとって、花とはこの世界に彩りと祝福をもたらす象徴的な存在なのだ。もちろん、いくら花びらをまいてもコロナウイルスが死滅することはないわけだが、色とりどりの花々を見た人の気持ちが明るく前向きになることで、疫病に打ち勝つ力が得られると考えたのだろう。

この話からもわかるように、インドはとてもカラフルな国だ。街のいたるところに鮮やかな色彩があふれている。僕はこれまでバイクでインドを8周し、数え切れないほど多くの人々にカメラを向けてきたのだが、特に働く女性たちの色鮮やかなファッションにはいつも驚かされている。田んぼで雑草を刈り取る女たちも、畑でトウガラシを収穫する女たちも、道路工事現場の女たちも、まるで南国の野鳥のようにカラフルなサリーを着て働いているのだ。

動きやすさや機能性という点で、サリーよりも優れた服はいくらでもあるだろう。実際、日本をはじめとする多くの国々では、労働の現場で伝統衣装を着ることはとても少なくなっている。結婚式や宗教儀式などのハレの日には伝統衣装を着るが、それ以外の日常生活はカジュアルな服で過ごす、というのが世界的な潮流なのだ。

しかし、どういうわけかインドの人々はその世界的な流れに逆らっているように見える。もちろん、デリーやムンバイなどの大都市に住む若者の中には、ジーンズとTシャツという現代的なスタイルを選ぶ人が増えてはいるが、そうしたカジュアル化のスピードは他国と比べてもかなり遅い。そこには美意識の違い、つまり「日常の中で何を優先するか」というプライオリティーの違いが反映されているのだと思う。

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