「好き」を仕事にしたはずが…ワクワク感なぜ消える?
(9)アンダーマイニング効果
写真はイメージ =PIXTA
「心の法則を読み解く心理学は、ビジネスのあらゆる局面にかかわってくる」。心理学者であり、MP人間科学研究所代表を務める榎本博明氏はこう話します。心理学の知見をビジネスの様々な局面で生かせるようにQ&A形式でまとめた最新刊『ビジネス心理学大全』(日本経済新聞出版)から、「chapter1 モチベーションの心理学」の章を紹介、「どうしたらやる気が高まるのか」を考えていきます。
学生時代のキャリア教育で、「好きなこと探し」をさせられ、「好きなことを就職につなげよう」と言われて、ファッションが好きな私はアパレル関係の会社に就職しました。最初のうちはワクワク感があったのですが、今ではアパレル業界の仕事に対する興味も失せて、自分はほんとうにファッションが好きだったのだろうかと疑問に思うようになりました。やはり、業界の選択を間違えたのでしょうか?
せっかく好きで選んだ業界に入れたのに、いつの間にかワクワク感がなくなってしまったというのは淋しいことです。だからといって、選択が間違っていたとは限りません。働くときの意識をちょっと変えてみることで、かつてのようなワクワク感が蘇るかもしれません。
そこには、前項で解説した外発的動機づけと内発的動機づけが絡んでいます。
この問題について考える際に参考になるのが、多くの子どもたちが勉強嫌いになってしまう心理メカニズムです。
なぜ勉強嫌いになってしまうのか
赤ちゃんは、ほんの1~2歩でも歩けるようになると、心から嬉しそうに笑います。何度転んでも、また立ち上がって歩こうとします。歩けるようになるのが嬉しくてたまらないのです。
字を覚えたばかりの幼児は、駅の名前や店の看板の文字を必死に読もうとし、読めるとほんとうに嬉しそうな表情になります。字を読めるようになるのが嬉しくてたまらないのです。
できないことができるようになるのが嬉しい。わからないことがわかるようになるのが嬉しい。だから、もっとできるようになりたい、もっとわかるようになりたい。だれでもそうでしょう。元々は、だれもが勉強好きだったはずなのです。
それが、いつの間にか勉強嫌いになってしまう。そこには外発的動機づけが関係しているのです。