背筋を伸ばしたいとき、相手に敬意を表したいとき、スーツは最大の武器になる。それは、会社に勤めるビジネスマンだけではない。今回は、竹・酒・音を通じて表現する方たちに「スーツを着ること」の魅力を語っていただいた。
Tatsuyuki KOSUGA × KYOTO BESPOKE
「公長斎小菅」5代目・小菅 達之さん × 京都ビスポークのオーダースーツ
Profile
小菅 達之さん(39)
1898年の創業以来、竹一筋にものづくりを営む「公長斎小菅」の5代目、代表取締役副社長。伝統工芸を未来のモノ作りと結びつけ、創造の可能性を探る「GO-ON」プロジェクトのメンバーでもある。
公長斎小菅(こうちょうさい こすが)
京都本店には、食卓を彩るカトラリーからティッシュボックスなどの生活雑貨まで、モダンな意匠の竹細工アイテムが並ぶ。京都に行ったら是非立ち寄りたい一軒だ。
住所:京都市中央区中島町74 ザ ロイヤルパークホテル京都三条1F TEL:075-221-8687
「自分の仕事にも通じる“和柄”を裏地にあしらいました。サイズや微調整を楽しめるのもオーダースーツの魅力」
公長斎小菅。古くから日本人の生活と密接な関わりにあった「竹」を用いて、その素材の強さ、美しさを生かしながらモノ作りを続けてきたブランドだ。
京都本店に一歩足を踏み入れると、カトラリーや日用雑貨に留まらない、「竹」という素材の特性を生かし、モダンに進化させた多彩なラインナップに目を奪われる。
たとえば、上の写真にもある壁面飾り「輪弧」(りんこ)は、竹籠の底部分に使用する輪弧編みの技術から想を広げたもの。細く割いたひごを放射線状に散らすことで、美しいインテリアに形を変えた。
一見、古めかしい伝統工芸と見られがちな竹細工に今の感性を加えることで、モノ作りの可能性を広げてきたのが、5代目の小菅達之さんだ。20代初期は企業に勤め、その後、家業の公長斎小菅を継いだ。
「20代後半、飛び込み営業をしていた頃から、スーツは一張羅でした。高級旅館などをターゲットにしていたので、誠実さをアピールしなければ若者は相手にしてもらえません。前の晩には必ず靴を磨いて、高いものでなくともスーツをきちんと着て、身なりを整えることが商談相手への誠意に繋がると思いました。海外の5つ星ホテルでも、装いがきちんとしていれば、服の話で盛り上がったりして、商談も円滑に進みます」
こうして“戦闘服”としてのスーツを武器に、国内外にブランドを展開していった小菅さん。既製スーツを脱却し、3年前、「京都ビスポーク」にて初のオーダースーツに挑戦した。
「きちんと採寸して身体に合ったスーツを作ってみたら、スーツはオーダーに限るな!と確信しましたね。パンツの裾の絞り具合や、肩にツキジワが出ないための補整など、ちょっとした工夫でスマートに見えたり個性が出せたりする。その醍醐味を知りました」